20 ページ20
「そ、そんなあ〜……」
レムレスの一段と落ち込んだ声。
それじゃあ、と改めてテーブルに向き直って手を伸ばそうとしたその時、シェゾさんに名前を呼ばれる。
「アイラ」
「はい?」
「“シェゾさん”っていうのやめろ」
「え?」
「シェゾって呼べ」
「わかりました、シェゾ!……」
あれ、また何か思い出せそうで思い出せない。……
今度はのどがつかえるような感覚もする。
なんだろう、これは?
「でも!僕だって君にお菓子をあげようとしてたじゃないか 受け取らなかったのは君だろう!」
レムレスはまだ粘るようだ。
……確かにレムレスは初め、シェゾにキャンディを差し出していた。
シェゾがそんなのはいらん!と言っていたような…
「まだ言うか……」
シェゾは半分呆れている。
「ほ〜らキャンディにチョコレート、マフィンやフィナンシェもあるよ」
レムレスは持っているステッキ…?をひと振りして、どこからともなくお菓子を出しながらじりじりとシェゾに詰め寄っていく。
そんなレムレスに後ずさりしながら、シェゾは観念したみたいだ。
「だ〜〜!!もうわかった!わかったから!お前も食べろ!!」
「ほんと?やったあ!いただきます!!」
なんという切り替えの速さだろう。
レムレスは素早くクッキーを手に取って食べた。
「うん、美味しい!」
うわあ私のクッキーを食べた時の作り笑いとはまるで違ういい笑顔……
とりあえずはレムレスにもシェゾのクッキーを食べられる権利が与えられてよかった。
さっきのレムレスの様子は殺気が凄くて、もしダメだったら私が「このクッキーは私がシェゾから貰ったものだから、私がどうしようと勝手だよね?」理論で横流しするつもりだった。
それくらい危ない感じだった。なんとなくわかる。
「今のはぷよ勝負で決着をつけても良かったんだが…」
「今のって、2人のクッキー争奪戦のことですか?」
シェゾのため息混じりのつぶやきに質問を重ねる。
「ああ。…お前はぷよ勝負をしない世界から来たんだったな。この世界ではどんな些細なことでもぷよ勝負で決着をつけるんだ……といっても自覚はあんまり無いんだが」
ドラコがいきなりいきなりぷよ勝負を挑んできた理由はこれなのかもしれない。
なるほど と頷くと、レムレスに食べ尽くされそうなクッキーを見て慌てて「それじゃあ私もいただきます!」とクッキーを手に取った。
「どうぞ」
とシェゾが微笑んだ……気がする。
19人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ゆきろあ(プロフ) - 名無しさん» 名無しさんありがとうございます!実は意外にそういう細々したところを書くのが私自身楽しかったりもします...笑 今回解説仕切れ無かった部分をまたどこかで紹介したいなと思っていますのでそちらも楽しみにしていただければと思います!長文ありがとうございました! (2019年10月31日 17時) (レス) id: ac64387404 (このIDを非表示/違反報告)
名無し - た目と年齢の不一致についての描写と、突然の事に混乱しつつなんとかしようと動く夢主の心理描写が好きでした…。今後の展開も楽しみにしています。長々と失礼しました。 (2019年10月27日 22時) (レス) id: 04c8bfa83c (このIDを非表示/違反報告)
名無し - 魔導学校と飛ばされた場所の位置関係についての描写について、初めて読んだとき「そう表現してくるか!」「だからあの子達に会ったのね!」と勝手に納得して感動しておりました…きっとゆきろあ様の中に確たる設定・流れがあるからでしょうね。個人的にシェゾの見た目 (2019年10月27日 22時) (レス) id: 04c8bfa83c (このIDを非表示/違反報告)
名無し - 続編おめでとうございます!夢主の心理描写やキャラの言い回しなど違和感を感じさせない物語と丁寧に織られた伏線が好きなので今後も読める喜び余ってコメントします!後書きの解説では答え合わせをしていただけているようで嬉しかったです…シェゾとレムの言い回しや、 (2019年10月27日 22時) (レス) id: 04c8bfa83c (このIDを非表示/違反報告)
ゆきろあ(プロフ) - 名無しさん» ありがとうございます!そう言っていただけてとても嬉しいです...!性格や関係性は私が書くにあたってこだわっていた部分でもあるので気づいて頂けて感激です。完結まで頑張りますので、よろしくお願いします! (2019年10月15日 2時) (レス) id: ac64387404 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:加糖雪 | 作成日時:2019年7月3日 18時