19 ページ19
洞窟の中はじめっとしていて、でも空気は冷たくて肌寒い。
ごつごつした黒や灰色の岩に、クリスタルの柱。
よく見ると光に反射して至る所にあるクリスタルが光った。
｢すごい、こんなに水晶が……｣
思わず見蕩れてしまう。
ハーキマーダイアモンドやムーンストーンに似ているものがあるなあと思いながら奥へと進んでいく。
宝石のことは本で読んだことがあり、詳しい方だと思うが実際に原石を見るのは初めてだ。
少し前にいる2人のところに追いつくと、2人はテーブルを囲んで立っていた。
テーブルの上にはボックスクッキーが乗った皿と、ティーカップにティーポット。
｢甘い匂いがしたと思ったら……お菓子を作っていたんだね？｣
テーブルの上のクッキーを見ながら、レムレスが言う。
｢せっかくクッキーを焼いて優雅なティータイムを…ってときにお前らが入口の前で騒ぎ出してそれどころじゃなくなったんだよ｣
シェゾさんが迷惑そうに言った。
クッキーを作っていたから｢俺が作った方が美味い｣とか言っていたのか。
｢お菓子があるならティータイムに誘ってくれたら良かったのに｣
｢お前には俺の作ったウエディングケーキを勝手に食べ尽くした前科が……それ以前に俺は1人が好きなんだ！｣
｢シェゾさんはこの洞窟に住んでるんですか？｣
｢そうだ｣
ここが家……湿度の点を差し引けば結構いい場所だ。ちょっと羨ましい。
｢ねえ、クッキー食べてもいいかな？｣
｢駄目だ｣
レムレスが甘えたように言うが即答で切り捨てるシェゾさん。
｢どうしてもですか？私も食べたいです｣
ほんとに私のより美味しいのか確かめたい。
私もダメ元で頼んでみる。
すると、少し考えたあと
｢……お前にはやってもいいか…｣
と返ってきた。
｢え！｣と私の喜びの声とレムレスの落ち込む声が重なる。
｢お前…アイラにはアップルパイとクッキーをご馳走になったからな｣
シェゾさんに初めて呼び捨てにされた、そう、初めてのはずなのになんだかとても……
｢…ありがとうございます、シェゾさん｣
なんとも言えない感覚が頭に靄をかけるが、思い出さない方が良い気がしてその思考は一旦停止させる。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 19人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ゆきろあ(プロフ) - 名無しさん» 名無しさんありがとうございます！実は意外にそういう細々したところを書くのが私自身楽しかったりもします...笑 今回解説仕切れ無かった部分をまたどこかで紹介したいなと思っていますのでそちらも楽しみにしていただければと思います！長文ありがとうございました！ (2019年10月31日 17時) (
レス) id: ac64387404 (このIDを非表示/違反報告)
名無し - た目と年齢の不一致についての描写と、突然の事に混乱しつつなんとかしようと動く夢主の心理描写が好きでした…。今後の展開も楽しみにしています。長々と失礼しました。 (2019年10月27日 22時) (レス) id: 04c8bfa83c (このIDを非表示/違反報告)
名無し - 魔導学校と飛ばされた場所の位置関係についての描写について、初めて読んだとき｢そう表現してくるか！｣｢だからあの子達に会ったのね！｣と勝手に納得して感動しておりました…きっとゆきろあ様の中に確たる設定・流れがあるからでしょうね。個人的にシェゾの見た目 (2019年10月27日 22時) (レス) id: 04c8bfa83c (このIDを非表示/違反報告)
名無し - 続編おめでとうございます！夢主の心理描写やキャラの言い回しなど違和感を感じさせない物語と丁寧に織られた伏線が好きなので今後も読める喜び余ってコメントします！後書きの解説では答え合わせをしていただけているようで嬉しかったです…シェゾとレムの言い回しや、 (2019年10月27日 22時) (レス) id: 04c8bfa83c (このIDを非表示/違反報告)
ゆきろあ(プロフ) - 名無しさん» ありがとうございます！そう言っていただけてとても嬉しいです...！性格や関係性は私が書くにあたってこだわっていた部分でもあるので気づいて頂けて感激です。完結まで頑張りますので、よろしくお願いします！ (2019年10月15日 2時) (レス) id: ac64387404 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：加糖雪 | 作成日時：2019年7月3日 18時
