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どしゃっ、とAの後ろへ、鉄双節棍が小さく砂ぼこりをあげて地面に落ちた。
「…食満、やっぱり顔が良いなあ…」
「……は?」
Aは抱き寄せたついでに留三郎に自分の顔を近づけてじっくり見ている。
「このあと授業ないでしょ?それならこのままデートにでも行かない?ちょうど薬草と包帯買わなきゃだし。美味しい団子屋さんが…」
「…このッ!」
「おっと」
留三郎は隙をついてAの腕の中から抜け出す。
鉄双節棍を拾い上げるというのは、Aの背の後ろにある以上無理だろう。
それなら、と留三郎は足元の小石を素早く手に取る。
「オラァ!」
「あぶな!?」
Aは投げつけられた小石をひらりとかわした。
「当たれッ!」
「きゃー食満先輩こわ〜い!」
続けざまに小石を投げる留三郎に、裏声でわざとらしく怖がりながらも避けるA。
「ってやば…!」
Aは少し焦って小石の飛んだ先を振り返る。
留三郎が投げた小石のひとつが、真っ直ぐ伊作の方へ飛んだ。隣の乱太郎が叫ぶ。
「伊作先輩危ない!」
「えっ?!うわ…っ?!……っ、A?」
Aは素早く飛んで伊作を抱きかかえて避けた。
「大丈夫?」
「うん、ありがとう…」
「ちょっと食満〜!同室に当たるとこだったじゃーん!」
「先に俺の武器を奪ったのはAだろ?!」
「も、もうこの勝負終わりにすんのかと思って…」
「はあ?!何を勝手に…!」
「ふ、二人とも……僕の為に争わないでよー!!」
Aの腕に抱えられたままの伊作が叫んだ。
「……ふっ、あははは!伊作ってば男2人に取り合いにされてる女の子みたいな台詞だな!」
「なっ、笑い事じゃないでしょA!」
「よし、じゃあこの勝負に勝って伊作を俺のものにしちゃおう」
「……へ?」
「やっぱ伊作を手に入れるためには、伊作を大事に大事にしてる食満を倒さないとね!
ははっ、なんか楽しくなってきた!今までもずっと楽しかったけど!」
Aは伊作を降ろして立ち上がる。
「な、なんかよく分からないけどAのスイッチが入った…?ってことはチャンス、なのか…?」
留三郎は今のうちに、と落ちた鉄双節棍を拾い上げ、ぐっと握る手に力を込めた。
「いくよ食満!」
「…っ、ああ!」
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加糖雪(プロフ) - 乃花おむ子さん» 乃花おむ子さんこちらにもコメントくださりありがとうございます!ギャグに自信ないのですが笑っていただけて嬉しいです〜!こちらの作品はかなりゆっくりの更新になりますがよろしくお願いいたしますm(_ _)m (2021年9月25日 18時) (レス) id: 7edce3b0d6 (このIDを非表示/違反報告)
乃花おむ子(プロフ) - めちゃめちゃ面白くて笑いながら読んでしまいました……!無理のない程度に更新頑張ってください! (2021年9月24日 7時) (レス) @page27 id: 3538425ae0 (このIDを非表示/違反報告)
加糖雪(プロフ) - まーぶりんさん» まーぶりんさんコメントありがとうございます!楽しんで頂けている様で何よりです…!応援ありがとうございます。今後も何卒よろしくお願いいたします! (2021年5月21日 20時) (レス) id: 22bc115167 (このIDを非表示/違反報告)
まーぶりん(プロフ) - ウッ…凄く好きです…!!ホント主様の文才が神すぎて…!更新楽しみにしてます( ゚д゚)頑張ってくださいー!! (2021年5月20日 17時) (レス) id: 045921842f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:加糖 雪 | 作成日時:2021年5月12日 22時