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その場にいる全員の視線が私に集まる。
私はその視線のどれとも合わせることが出来なくて、俯いたまま言葉を続けた。
「私の住んでいた村は、先日戦に巻き込まれて燃やされました。私のこのけがはその時に負ったものです」
私はなんとなく、傷だらけの左手に視線を滑らせて、その手で自分の右手を包帯の上から握った。
「それで、このけがを手当してくれた方がいたみたいなのですが、私は意識がなくてお礼が言えなくて…。
意識が戻ってから、私の手当てをしてたという人が“忍術学園の保健委員”だという話を聞いたんです」
私は顔を上げた。
「だから、お礼が伝えたくて」
みんなの顔を見ると、全員揃って私の方を見たまま黙っていた。
「あ、ああ…お礼を言うために忍術学園に来たはずだったんです、けど…倒れてご迷惑を…」
すみません、とまた俯きながら小さく謝罪する。
「そうだったんだね」
伊作さんの声に、私はそっと顔を上げた。
「と、いうことは…」
伏木蔵くんは何やら言いかける。
あれ、伏木蔵くん以外のみんなも何か言いたそうにしている…?
「それってこの前」
と左近くん。
「とある村が奇襲されるって話が学園に入ってきて」
数馬くんは首を傾げる。
「伊作先輩が向かった時のことでは…?」
乱太郎くんは言いつつ伊作さんの方を見た。
「うん、やっぱりAちゃんはあの時の子だったんだね」
「えっ」
私は驚いて伊作さんの顔を見た。
ばっちりと目が合う。
伊作さんは微笑んだ。
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加糖雪(プロフ) - Hanakoさん» ありがとうございます!^^ (2021年4月25日 21時) (レス) id: ac64387404 (このIDを非表示/違反報告)
Hanako - 面白い!! (2021年4月17日 18時) (レス) id: 1d8bf8714f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:加糖 雪 | 作成日時:2021年3月31日 9時