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「夕ご飯を持ってきましたよ」
襖の開く音と新野さんの声がして、私は目を開けた。
新野さんと知らない少年が2人揃って夕ご飯と思われるものの乗ったお盆を持って部屋に入ってくる。
2人はお盆を少し離れた机に置くと、一緒に枕元にやってきた。
「目が覚めたんだね。よかった…」
少年の方は枕元に座りながら笑った。
「夕ご飯を持ってきたんだけど、起きれそう?」
私は同じくらいの歳に見えるその緑色の着物…いや忍び装束?を着た彼が心配そうに覗き込む。
私はその顔をどこか他人事のように見ていた。
「え、…と…は、はい……」
ぼんやりしながら答えると、私は腕をついて体を起こそうとする。
けれど思ったように力が入らない。
嘘みたいに体が重くて、全然起き上がらない。
「っ…?!」
「だ、大丈夫?!」
と、その少年に肩を支えてもらって私はやっと上半身を起こすことができた。
「す、みません…、ありがとうございます…」
私はすぐ側の壁にもたれかかって座る状態を保った。
自分では大丈夫だと思っていたけど、実際には身体が全く追いついてないような状況らしい。
何か支えがないとまた倒れてしまいそうだった。
「今のあなたは無理にでも食べないといけないような状態なのですが、…無理しないでくださいね。頑張って食べてはもらいたいですけど…」
新野さんに心配そうにそう言われて、今の私がとても弱っているように見えるのだと分かった。
「伊作くん、申し訳ないんだけどこれから他の先生方にこのこと伝えに行ってくるから戻ってくるまで少し任せてもいいかな」
「はい。任せてください」
伊作くん、と呼ばれた彼はにこりと返事をする。
じゃあお願いしますね、と言い残すと新野先生は医務室を出て行ってしまった。
伊作…てことは保健委員の…?
「新野先生から話は聞いたと思うけど、君何日もご飯食べてなかったでしょ」
彼は机の上からお盆をひとつ持ってくると、枕元の床に置く。
お盆の上にはスプーンとどんぶり。どんぶりの中には雑炊が入っていた。
彼はさっと湯気のたっている雑炊のどんぶりを手に取って、スプーンですくう。
「今の君を治すには薬なんかよりも美味しいご飯が必要だから、ちゃんと食べること!」
そして彼はそのスプーンを私の口元に近づけた。
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加糖雪(プロフ) - Hanakoさん» ありがとうございます!^^ (2021年4月25日 21時) (レス) id: ac64387404 (このIDを非表示/違反報告)
Hanako - 面白い!! (2021年4月17日 18時) (レス) id: 1d8bf8714f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:加糖 雪 | 作成日時:2021年3月31日 9時