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夜明け間近。
奇襲を受けたとある村の攻撃が止んで間もなく、忍術学園の保健委員会委員長である善法寺伊作はその村に到着した。
村を燃やした城の忍者から忍者へと、忍者伝いに学園に流れてきた情報をもとに、けが人が多数出ると踏んだからだ。
それは奇襲となればなおさらだ。
村の状況は最悪だった。
村が燃えたという言葉通り、村のほとんどが燃やされていてあちこちに人が倒れている。
倒れているのは村人が大半と、奇襲を仕掛けた側の兵士や忍者が少数。
反撃の際の攻撃が当たったらしい。
伊作は動ける村民たちと、まだ助かる見込みのある人を村から少し離れた川の近くの原っぱへと移動させ治療にあたった。
怪我をした人達を並べて寝かせ、順に手当をしていく。
救助に奔走していると、あっという間に太陽が登りきって明るくなった。
変わらずやってくる朝が、奇襲の残した悲惨な現状を照らす。
「おい!この子まだ息があるんだ!急いで診てもらえないか!」
助かった村人の1人が、人を背負って伊作の救護所へやってくるのが見えた。
「はい!」
伊作は途中の手当を手早く済ませて、その男の方へ走る。
男が背負っていたのは伊作と同じくらいの歳の少女であった。
男の背中から他のけが人たちの横にその少女を寝かせてやる。
「すみません、向こうの桶使って水汲んできてもらえますか」
「ああ、はい!」
少女を連れてきた男にそう頼み、男が走り始めると同時に伊作は怪我の状態をみ始める。
左脚と脇腹に矢を掠めた跡があり血だらけ、
足は裸足で走っていたのか傷が酷く、さらに身体のあちこちに火傷を負っていた。
伊作は女の子なのにな、と意識のない少女に自分が悲しくなった。
「水、持ってきました!」
「ありがとうございます!」
「私はまた村を見てきます」
「わかりました、お気をつけて」
布を男に汲んできてもらった水で濡らして絞ると、少女の顔のすすや土の汚れを落としてやる。
「顔の火傷は顎と右頬…少しだけ…良かった」
きちんと手当して治れば傷も綺麗に消えるだろうと思うと、伊作はなんだか安心した。
次に腕を拭こうとその少女の手を取る。
すると、弱々しくもやんわりと少女の手が伊作の手を握った。
伊作も、その手を優しく握り返してやる。
「僕がきちんと手当てするから…」
伊作は横たわる少女に微笑んだ。
「だから絶対、絶対絶対、生きてね」
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加糖雪(プロフ) - Hanakoさん» ありがとうございます!^^ (2021年4月25日 21時) (レス) id: ac64387404 (このIDを非表示/違反報告)
Hanako - 面白い!! (2021年4月17日 18時) (レス) id: 1d8bf8714f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:加糖 雪 | 作成日時:2021年3月31日 9時