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目を開けると、部屋の天井が見えた。
木の天井は初めて見るもので、どこからか差し込む夕日の色に染まっていた。
さっき目を覚ました、いや正確には意識だけ起きたその後また眠ってしまっていたようだ。
その時に聞いた会話から考えるとお昼時から夕方になるまで、朝に倒れてからずっと眠っていたということも考えると今日は丸1日眠りこけていたことになる。
視線だけ動かすと、右側はすぐ壁になっているのが見えた。
自分が寝ているのは部屋の端か…
じゃあ、と左側に頭だけ動かすと、部屋の全体が見える。
あれ、そういえばついたてを置いたような音を聞いたけど、置かれてない…あ、向こうの壁の端に退けられている。
小さな引き出しがたくさんついた高い棚と、机や床にところどころ置かれたすり鉢と草と花…
「あ、」
壁と向き合う形で置かれている奥の机で、何やら作業をしている人の背中が見えた。
白い服を着ているその人は、私の声に気がついてこちらを見た。
「おや、気がつきましたか」
おじさん、と言えるような優しい顔つきのその人は手にしていた筆を丁寧に机に置くと、側にやってきた。
「あ、えっと…」
「ああ良かったです。ええと…はじめまして。寝たままでいいので聞いてくださいね」
私は顔だけその人の方を見て、頷いた。
「私はここ忍術学園の校医、新野といいます。あなたは忍術学園にやってきて門の前で倒れたと聞いていますが、覚えていますか?」
「はい…」
筆を手に取ってそれが地面に転がったのを見たところまでは記憶がある。
やはり私は忍術学園の人に助けられてその敷地内にいるのだ。
「ええと、伊作くんの書いた記録書には…」
新野さんは近くの本やら紙の束の山の1番上に置いてある紙を1枚手にした。
そしてそれを見ながら、
「しばらく何も食べてないことによる慢性的な栄養失調」
「はあ…」
私はため息に近い言葉を漏らして新野さんから視線を逸らした。
心当たりしか無いからだ。
何日も、下手すると何週間もまともにご飯と呼ぶものを食べていない。
「と書いてありますが…まあもちろん、心当たりがありますよね。あなたにはとりあえずご飯を食べてもらいます」
「え」
「ちょうど夕食の時間です。食堂のおばちゃんの作ったおいしいご飯ができたてで食べられますよ」
そう言うと新野さんは私ににっこりと微笑んだ。
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加糖雪(プロフ) - Hanakoさん» ありがとうございます!^^ (2021年4月25日 21時) (レス) id: ac64387404 (このIDを非表示/違反報告)
Hanako - 面白い!! (2021年4月17日 18時) (レス) id: 1d8bf8714f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:加糖 雪 | 作成日時:2021年3月31日 9時