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校舎の2階辺りの高さから落ちてくるキャンバスに向かって走った。
上履きのままだし、エプロンが足を動かしにくくしてるけど関係ない。
筆とパレットを地面に置いて、走る。
両腕を広げて、F50号のキャンバスをひとつ。
「いっ……!!」
ガツン、と腕に当たった。
重い、けど大丈夫。気にするな。地面において、次!
ふたつ。
落下地点に滑り込むように20メートル先に走り、キャンバスの端を掴む。
腕に当てるよりは痛くない。
みっつ。
次に落ちてくるのがどれかを目測して、10メートル先に向かって走る。
そして飛ぶ。M12号、晴れの日の学校の風景画。
何故だかいつもよりも力が出た気がする。
自分でも信じられない高さを飛んで、それを掴んだ。
よっつ。
体が軽い。神様が、絶対に諦めるなと後押ししてくれているのかもしれない。
いつつ。
とにかく無我夢中で、走って、飛んで、跳ねて、
むっつ。
全部のキャンバスを衝撃から守った。
「ッは、はあっ、は、はあ…あ、ぅ、むり……」
両膝に手を当て、がっくりこうべを垂れる。
息切れで苦しいのをなんとか整え、とりあえずは、と地面に置いたパレットを拾い上げる。
どしゃあっ、と地面に何かが落ちた音がした。
中庭に風が起きて、髪の毛が吹かれる。
キャンバスは全部守って地面に置いてあるはずだ。
じゃあ何が落ちて___
「!?」
そちらを見る。目が合った。
ついでに息が止まった。
体がびくりとして、そして動かせなくなった。
そこにはこちらを見つめる、両腕のない白い化け物が___
「…お前、やっぱり見えてるんだな」
その隣に立つ伏黒さんが、さっきよりもボロボロになった姿で言葉を投げた。
「……や、」
喉から絞り出した声があまりにも小さい。
いや、見えていなかった。
さっきまで見えていなかったはずなのだ。
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加糖雪(プロフ) - ねむさん» ありがとうございます!続編でもよろしくお願いします〜! (2022年2月11日 4時) (レス) id: 7edce3b0d6 (このIDを非表示/違反報告)
ねむ - ひぇ〜!また更新されておる〜!!めちゃくちゃ良いデス!自分のペースで続編よろしくお願いします (2022年2月7日 22時) (レス) @page43 id: 38d2d0b865 (このIDを非表示/違反報告)
加糖雪(プロフ) - ねむさん» ねむさんコメントありがとうございます!面白いですね〜どんな風に強くなっていくか、今後の展開に期待していただければと思います! (2022年2月7日 9時) (レス) @page42 id: 7edce3b0d6 (このIDを非表示/違反報告)
ねむ - 夢主、絵が命かけれるほど大好きなんですね!えと、絵を破かれたりしたら強くなる…みたいなことを妄想しました(><#) (2022年2月5日 20時) (レス) @page35 id: 38d2d0b865 (このIDを非表示/違反報告)
加糖雪(プロフ) - るきー流季ーさん» るき―流季―さんコメントありがとうございます!絵師を目指していらっしゃるんですね。この作品をもって私も読んでくださる方を応援できるように頑張ります! (2022年1月30日 22時) (レス) @page23 id: 7edce3b0d6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:星藍 海 | 作成日時:2022年1月20日 1時