幕間-先生の思案 ページ18
しばらくファミレスで飲み食いした後、会計を済ませて外に出た。
にしても、これはまたしばらく忙しいかもな。
自分の跡をついてくる特級呪霊に戸惑いながら歩く彼女を見ながら、これからのことをふっと思案した。
上の奴らはごちゃごちゃうるさくなるだろうし、何よりこの子をこれからどうしていこう。
いつもの怪奇現象解決の依頼かと思いきや、調べたら眠っていたのは特級だし、祓おうとすれば女の子に懐いているし。
悠仁から話を聞いた感じ、この件に宿儺の指は関係していないみたいだけど。
彼女の呪力は未知数。
何も知らないながら、それを呪霊に受け渡し、校舎から落ちた自分のキャンバスを“呪力を利用しながら”守った。
しっかり使い方を教えれば、必ず強くなる。
思い出すのは、かつて彼女のように“憑かれていた”教え子のこと。
目の前で死んだ婚約者を呪い、怨霊として生かし、共に戦った___
___彼のケースとよく似ている。
とすれば、あの子は何に呪われたのだろう。
それとも、あの子は何を呪ったのだろう。
「君も、何かを呪い、何かに呪われているわけだ」
「…は?」
声をかけ、足を止めると、彼女も足を止めてこちらを振り向いた。
「特級呪霊に憑かれてしまう程にね」
彼女は逡巡したのち、ゆっくり僕を見据えた。
「……絵を描くことは、呪いですから」
「面白いこと言うね」
「何回も辛くて嫌になって、それでも自分にはこれしかなくて、辞められないんです」
腕のない特級呪霊が、彼女にわずかに寄り添った。
「それと同時に、私は絵を描いて誰かを呪ってる。嫉妬とか羨望とか欲とか、思いを全部キャンバスにぶつけてるんです」
「……愛ほど歪んだ呪いはない、か」
よく言ったものだ。
「はは、言えてますね。それ」
夜の暗闇の中、彼女がはじめてその目元と口元を綻ばせる。
呪霊の方も、低く何かを呻いた。
「そいつはなんて?」
「……“お前も面白いことを言うじゃないか”、と」
「おーい!2人とも!車もう出すって!」
既に車に乗り込んだ悠仁が、窓を開けてこちらに叫んだ。
「今行く」と返事をして、Aと僕は並んで歩き出した。
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加糖雪(プロフ) - ねむさん» ありがとうございます!続編でもよろしくお願いします〜! (2022年2月11日 4時) (レス) id: 7edce3b0d6 (このIDを非表示/違反報告)
ねむ - ひぇ〜!また更新されておる〜!!めちゃくちゃ良いデス!自分のペースで続編よろしくお願いします (2022年2月7日 22時) (レス) @page43 id: 38d2d0b865 (このIDを非表示/違反報告)
加糖雪(プロフ) - ねむさん» ねむさんコメントありがとうございます!面白いですね〜どんな風に強くなっていくか、今後の展開に期待していただければと思います! (2022年2月7日 9時) (レス) @page42 id: 7edce3b0d6 (このIDを非表示/違反報告)
ねむ - 夢主、絵が命かけれるほど大好きなんですね!えと、絵を破かれたりしたら強くなる…みたいなことを妄想しました(><#) (2022年2月5日 20時) (レス) @page35 id: 38d2d0b865 (このIDを非表示/違反報告)
加糖雪(プロフ) - るきー流季ーさん» るき―流季―さんコメントありがとうございます!絵師を目指していらっしゃるんですね。この作品をもって私も読んでくださる方を応援できるように頑張ります! (2022年1月30日 22時) (レス) @page23 id: 7edce3b0d6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:星藍 海 | 作成日時:2022年1月20日 1時