愛から眺めて、向こう側を置いていく【RKRN】

7 ｢男ですよ？！」 ページ10

とはいえ話を一応全部聞いたものの、それはそれ、これはこれ、だ。


長々と天女様の話を聞かされていたからか、頭は妙に冷静さを取り戻していた。




「…それで、あの、俺が元の時代に帰るにはどうしたらいいんですかね…？」


「すまないが、ワシらには分からない。前の六人も皆、気がついたら居なくなっていたんじゃ」


「え、ええ……」



今日の小テストだって成績に反映されないとはいえ提出物だ。つまり内申点には影響する。
何としてでも学校に行かなくてはいけないのに…

昨日の夜勉強しなかった分もどうにか取り返さなきゃいけないし、スケジュールを組み直す必要だってある。

こんなに必死なのは、俺はそれなりに出来る優等生として今の今まで突っ走ってきたからだ。

高校三年生の春。受験生の一学期。こんなところでつまづいて積み上げてきたものをなし崩しにするなんて絶対できない。



「一応聞きますけど、ドッキリ…とかじゃないですよね？あの、マジで俺今ヤバいんで申し訳ないんですけど企画はここで打ち切って貰えると助かります…」

「残念じゃが、ドッキリではない」



(あ、ドッキリって言葉、この時代でも通じるんだ…)


じゃなくて！


「本気で言ってる…？」

本当に気の毒で仕方がないけれど、という様子でその場の全員が俺を見て頷いた。




どうやらタイムスリップしたことに間違いはないらしい。
とてもじゃないけど信じられないが。



「もちろん、心配しなくとも帰れるまでの生活は我々が保障するから安心して欲しい」



やはりこの人たちは俺を天女様だと思っているからか、俺も前例と同じ扱いにはなるようだ。
とりあえずほっと息を着く。

このままほいっと室町時代のえも知れぬ世界に放り出されたらそれこそ困るし…。





「お主は7人目の天女様なのじゃ」



「…はい？」




目の前のおじいちゃんはさらに意味のわからないことを告げ、今度こそ俺は卒倒してしまう所だった。




「いや俺男ですよ？！」




柄にもなく大声でツッコんでしまう。

8 ｢天女様に他ならない存在じゃ」→←・

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す