【昇華】 ページ34
もし透明人間になれたのなら、私じゃない誰かはどうするのだろうか。
変態代表である私の腐れ縁は女湯に行くと言う。
流石変態の代表である高校生男児だ。
その変態曰く、その他の男子も同じ事を言うのだそうだ。
じゃあ、女子だったらどうなのだろう。
何か典型的なパターンは無いものか。
「どうするんだろうな」
「どうするんだろうね」
「いや、篠本も女子だろ」
「そうだったね」
「え、まさかついてる？」
「どつくぞ」
「怒んなって」
笑うなよ、このデリカシー皆無の変態野郎が。
しかし、そんな変態な部分も素直に出せるのがコイツなのだ。
私にはコイツの様な素直さはどうやら持ち合わせてはいなかったらしい。
クズ幼馴染みの癖に......羨ましい。
素直になるとするなら世界が終わる時か、一生の別れ時位しかないのかもしれない。
そんなこと言って、ただ私が臆病風を吹かせているに過ぎないのだ。
「透明人間は可哀想だと思うね。死んじゃっても誰も気付かないじゃん」
「女湯覗けて死ぬなら本望だな」
「勝手に死んどけ」
「いつにも増して辛辣なお言葉ありがとうございます！」
「気持ち悪い」
「誉め言葉だ」
「ガチで？」
「ガチだ」
時々本心なのか疑いたくなる時もあるが、それは例外としておこう。
さて、もしも透明人間になる病気だとしたなら、少し違うだろうのではないだろうか。
治す薬も治療法もない。
もしかしたら最後はふっ、と姿を消して死んでしまうのかもしれない。
私は左手に巻かれた包帯を無意識に撫でていると、変態野郎は口を開いた。
「左手の火傷まだ治らねぇの？」
「痕がまだ残ってんの」
「透明人間だったらそれも消せるだろうな」
「消せるだろうね」
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