【コップ】 ページ29
どろりとした。
少女はそんな感覚になった。
少女の中に何かしら残るものを、少女は感じた。
コップの中の水ですら、
１００パーセントこぼすことが出来ない
２､０パーセントのみずが残るように
想いにも、わずかしら残るものがあるのだ。
恋にも
愛にも
生にも
不安や後悔を残すのだ。
そして、自分にも
どろり
みずの中には塩分が含まれていた
みずは
多少多めにしなければいけない。
規定の量よりたくさん注がなければ報われない。
ぴったりの量では、周りに霞んでしまう。
だから、誰よりも一番前にいた男は後ろ端に座る少女には気付かない。
周りも少女さえも嘘も得意だったから気付かせなかった。
男は気付かなかった。
１０にも満たない。
２､０パーセントの少女に。
少女の葛藤に気付かないのだ。
どろり
少女はいってしまった。
もうあの教室には帰ってこない。
花壇に落ちてきたジョーロからみずが撒き散る。
どろりとした。
黄色い花に雫が垂れる。
落書きとごみだらけの机もロッカーも中は空っぽ。
汚された教科書も何処かへ逃げた。
焼却炉はよく燃えただろう。
９８､０パーセント溢してきた。
残り２､０パーセント。
屋上には汚れた上靴を履く少女。
少女は花壇に落ちる前に２､０パーセントの少女に気付た。
ノートを抱え嗚咽を溢す。
ノートに貼られたふせん。
先生の何気ない「いつもお疲れさま」は燃やせなかった。
少女にとって先生は王子様のような人だった。
いつもぎりぎりのところで助けてくれる。
全部話せたら良かったのに
でも、声が奪われたように出なかったの
「もう一度......」
やはりコップの水は残った。
少女は屋上から地面の上を見下ろした。
Fin .
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