【名探偵コナン】傍観していたい人生でした(遠い目)【トリップ】

さんじゅうさーん ページ35

赤｢...A。｣



私の名前を呼び、近付いてくる赤井さんに、ビクリと肩が揺れる。




｢っあ、な、なんでもない...何でもないですっ...｣


そう言って慌てて立ち上がり、涙を拭こうとするが、その手をパシッと赤井さんに掴まれた。

私は泣き顔を見られるのが何だか恥ずかしくて、下を向く。


赤｢A。｣

赤井さんは、また名前を呼び、そのままスルリと私の頬に手を滑らせた。
赤井さんの手に、また小さく私の肩が揺れる。


ああもうそんないい声で呼ばないでくれ。恥ずかしさが頂点に達して死にそうだ。泣きそうなのは相変わらずだし。



いつまでも下を向いている私を見かねたのか、頬に添えられた手に力が込められ、上を向かされる。


赤井さんの深緑色の目に捉えられ、逸らすことが出来ない。

今にも泣きそうなのを堪えながら、擦れ声で｢なんですか...｣と呟く。


赤井さんはため息を1つつくと、両手を私の両頬に添え、




むにーっ



｢!?!?｣



思いっきり外側に引っ張った。



って痛い!!痛いよ赤井さん!?
えっ何やってんの赤井さん!?珍しくシリアスな雰囲気だったのに!?見事にぶち壊した!?
はァ!?ちょっと待ってｲﾐﾜｶﾝﾅｲ真のシリアスクラッシャーはお前だったのかよ!?!?いや予想外すぎるだろ完全に盲点だったわ!!!


何が起きたのかいまいち理解出来ずパニックになる私に、頬を引っ張るのをやめた赤井さんが口を開く。



赤｢...お前が泣いていた理由は聞かない。

...だが、泣きたいなら、泣け。｣



｢...っ!!｣



赤｢こういう時に我慢なんてするもんじゃない。｣



そう言って赤井さんは私を引き寄せ、優しく抱きしめた。




くっっそせっかく人が泣くの我慢してたのにコイツはっ...


赤井さん腕の中で、また視界がにじむ。



｢〜っ、ふ、...うぅ〜〜〜っ｣


なんだか悔しくて、ついまた涙を我慢しようとすると、赤井さんが｢ほら我慢するなと言っただろう。｣と頭をぽんぽんしてくれる。


ああもう私は子供かっつーのっ...


それでもその大きな手が暖かくて、目からぼろぼろと涙がこぼれ落ちてきた。



｢っう、うぁ、うぁあああっ...っふ、うぁああっ...!!!｣


やっと、この気持ちの正体が分かった。
ただ、寂しかったのだ。急に両親を奪われ、この世界に飛ばされて。
寂しくて、不安だったのだ。ずっと。



せきを切ったように溢れ出す涙と嗚咽を止めるすべもなく、赤井さんのジャケットを握りしめて、ただただ子供のように泣きじゃくった。

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