果物男子｡

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｢Aちゃん集合だってー｡｣

｢あれ､どしたの指｡バンソウコ貼っちゃって｡｣

｢ほんとだ｡なに切っちゃった？｣


｢あ…うん｡紙でちょっとね｡｣



気をつけてね､と言ってわたしを呼びに来てくれた同級生たちは小走りで先に行ってしまった｡


夜中にお守りを作ってて寝ぼけて針を思いっきり刺して血が出た､


なんて恥ずかしくて言えない｡

不器用がバレちゃう｡






今日は大会前日､お守りをみんなに渡す日｡

もちろん勝利先輩にも｡




みんな､がんばれ｡




そう思いながら作った｡




部活が終わり､お守りをみんなに手渡した｡

嬉しいって言ってくれて､ちょっと泣きそうだった｡

神宮寺先輩には､髪がぐしゃぐしゃになるほど頭を撫でられた｡


ちょっと恥ずかしかった｡


そして手元に残ったのは勝利先輩のお守り1つだけ｡



はやく渡さなきゃ｡でも…｡

勇気がなくて｡




あれから3日たったけど､相変わらずわたしは挙動不審で｡

きっと変な奴だと思われてる｡



…嫌われたかな､片想いで終わるのかな｡



気づいたら勝利先輩は着替えに更衣室に行ってしまった｡

帰りに渡してダッシュで帰ろ｡


今までで一番はやく着替えて､男子更衣室の前で先輩が出てくるのを待つ｡




｢勝利お前いつAちゃんに告るの？｣

｢ちょ､声でけぇよ！！｣

｢いやバレバレだって｡｣

｢ウソだろ！？｣

｢なぁーいつー！？｣



少しの沈黙｡




｢…優勝､したら｡｣




ガチャ､とドアの開く音｡

目の前には､勝利先輩がいる｡




｢…聞こえちゃった？｣


先輩が気まずそうに笑う｡

ごめんね､って小さく呟いた｡




｢あの､これお守りです｡大会がんばってクダサイ｡｣


手渡して帰ろうとしたら､



｢待って｡｣

｢え？｣



パシッって､手を掴まれた｡




｢お守り､ありがと｡｣


勝利先輩の顔を見れば､真剣な顔｡


｢俺､優勝したらAちゃんに伝えたいことがある｡だから…｡｣



先輩の大きな目に映っているのはわたし1人だけ｡



｢だから､勝つって信じて待ってて｡｣



わたしの目に映っているのは勝利先輩1人だけ｡



｢Aちゃんを”勝利”の女神にしてみせるから｡｣




じゃ､って言って勝利先輩は走って行った｡




先輩､顔真っ赤です｡
そんなわたしもきっと真っ赤｡




ふわりと香る､りんごの制汗剤｡



”初恋”の､香り｡



佐藤勝利＝リンゴ男子｡

爽やかで甘酸っぱい､”王道”の恋の味｡

家庭教師×高校生 k.n→←＊

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