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裏庭は草木が茂っていて、いつも少し薄暗い。
めったに人はいないけど、たまにカップルがよろしくやってるのでそこは要注意。
松の木の下の、空になった植木鉢の中にその子はいる。
「こんにちは、にゃんこくん。」
わたしのあいさつに返事するように、ミャーと小さくないた。
キャラメル色の毛色、きれいにハチワレに分かれたおでこ。
まんまるでくりくりのビー玉みたいな目が、きらきら透き通る。
「…君はお人形みたいだね、にゃんこくん。」
バッグから猫じゃらしを取り出すと、嬉しそうにじゃれてきた。
時計を見るのも忘れて、夢中で遊んだ。
時間なんて、人が来るなんて、気にもしてなかった。
「…アンタ誰?」
後ろから、男の人の声がした。
びっくりして振り返るとそこには、
「え、っと、菊、池さん…?」
「そーだけど。なに?キャーキャー言いたいなら帰ってくんないかな。」
「いや、あの、わたしは…」
「用事ないなら帰れっつてんの。」
そんなに睨まなくたって。そんなに低い声で怒らなくったって。
…わたしを、
「オシャレ女子といっしょにしないでください!!」
「…ハァ?」
「わたし人見知りだし田舎から出てきたばかりで、友だちいなくて…にゃんこくんがわたしの東京でのはじめての友だちなんです!」
だから、オシャレ女子といっしょにしないでください。
最後に力なくつぶやいてから気付いた。
わたしすっごいさみしいやつだと思われてる。
ものすごく恥ずかしい。
「…ぶっ、あはははは!!」
吹き出したと思ったら、菊池さんがお腹を抱えて大笑いしてた。
「…バカにしてません?」
「してねーよ、あーおもしろ。」
「……。」
「悪ぃ悪ぃ。そんな睨むなよ。」
もう絶対バカにしてる。
菊池さんが、こんなに笑う人だったなんて。意外だ。
「んで、アンタ名前は?」
「…矢野Aです。」
「Aな。おっけー。」
…あぁ、これからきっと、友だちいないやつだって笑われながら大学生活過ごすんだ。
心の中でため息をついた。
「よし、こいつが1号ならオレ2号な。」
にゃんこくんを抱っこして菊池さんがつぶやいた。
「…何がですか?」
そしてわたしを見て、満面の笑みで言った。
「Aの友だち2号の菊池風磨でっす。よろしこ。」
「…ハァ!?」
人生で1番マヌケな声が、裏庭にひびいた。
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桜色にゃんこ。(プロフ) - ☆さん» ご指摘ありがとうございます!まったく気づかなかった…!さっそく直しますね!バンソウコは実は表現でした。かわいいかなと思って…笑 見つけてくれてありがとうございました!気をつけます!これからもよろしくお願いします! (2019年6月9日 16時) (レス) id: df064b5f69 (このIDを非表示/違反報告)
☆ - ページ3【二年生にはネージャーの先輩がいないから】→マネージャーの先輩、 ページ6【バンソウコ貼っちゃって。】→バンソウコウ だと思います。 (2019年6月9日 14時) (レス) id: 44d28ad2ed (このIDを非表示/違反報告)
にゃんこ。(プロフ) - SexyGirlさん» コメントありがとうございます!!感動していただけて嬉しいです。゚(゚^o^゚)゚。 (2015年6月22日 16時) (レス) id: 924590d4bc (このIDを非表示/違反報告)
SexyGirl(プロフ) - 健人くんファンだからなのか、健人くんのお話読んで泣きそうになりました!笑 学校で読んだので涙を堪えました笑 (2015年6月22日 13時) (レス) id: 016237a4bf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:桜色にゃんこ | 作成日時:2014年11月7日 19時