夜の昼寝 [on] (ページ14)

今日:10 hit、昨日:0 hit、合計:2,087 hit

2 ページ14

．

昨夜は二人して随分と夜の昼寝を延長し過ぎて、遅く起きた朝にお湯を貯めた。

窓の外が水色に明るいうちに入るお風呂は、休日の晴れやかさも相まって、ゆるやかで甘美な時間が流れる気がしていた。
智は楽しい冗談で「一緒に入るか？」なんて和也に笑いかけたら、やけにぷりぷりしながら断っていた。

寝過ぎたあとに昼間からお酒を飲むなんて、なんてひどくデカダンスだと智は思った。小さな瓶を開けることさえ少し罪悪感を感じるような者だからこそ、この家は平和に保たれている。

白い桜の中に錦鯉があしらわれたプリントボトルに似合わず中身は辛口のため、グラス一杯の和らぎ水を用意した。

具材を沢山用意するのが面倒で、クリームチーズと二分の一ずつにしたミニトマト、惣菜のローストビーフ、そして冷蔵庫に余っていた薄切りハムとバジルソースだけでカナッペを用意した。とはいえテーブルにまとめて持ってきて、各自でつくってそのまま口に入れる。

桜も見えない一室で、桜の日本酒を傾ける。やはり、ひどくデカダンスだ。

「桜の樹の下にはってあるだろ」
「ああ、檸檬の人の」

「桜の樹の養分になるなら、桜の樹の下に埋められるのも、いいよなあ」

智は指についたクリームチーズをなめながら、意味もなさげにぼんやり呟いた。

．