それは、悪夢が覚めたように。(文豪ｽﾄﾚｲﾄﾞｯｸﾞｽ・中島敦)(シリアスラブ) ページ1
『お前など孤児院にも要らぬ！』
『どこぞで野垂れ死んでしまえ！』
敦「どうして、僕は...！」
敦「...ッ!!」
ガタッと机を鳴らし僕は目覚めた。
仕事中に居眠りをしてしまったようだ...
敦「よかった...夢だったか...」
探偵社に入ってからもよく孤児院の頃の夢を見る。
それだけあの日々は記憶に残っているのだろう。
「おや、白虎は眠りから解き放たれたか...なんてね。」
敦「あッ...Aさん...」
飛び起きた僕を見つめていたのは上司であり思い人のAさんであった。
「敦君お疲れ様かな？もう定時過ぎちゃってるよ。」
しまった。もう空は夕日に照らされ赤く輝いている。
敦「そうだ、仕事...！」
僕にはまだ仕事がかなり残っていた。
机の書類は山を成していた筈だ。
ところが、その山は跡形もなく片付いていた。
「あぁ、仕事なら片付けておいたよ。」
敦「えっ！？あぁ、あ、す、済みません...！！何かお詫びを...！」
僕の失態でAさんに仕事をやらせてしまうなんて...
僕はなんて格好悪いんだ……
「んー...じゃあ今度敦君の好物の茶漬けを一緒に食べに行こう、それで良い？」
敦「あっ、はい...！」
それはお詫び所か御褒美ですよ、Aさん...
「...んで、敦君。
随分魘されていた様だけれど...怖い夢でも見た？」
...Aさんは窓を背にそう言った。
その表情は逆光で見る事が叶わなかった。
然し、夕日に照らされるAさんは
美しく。
凛々しく。
何処か悲しそうであった。
敦「...それは」
「敦君、私は上司であり探偵社の大切な仲間だ...
少しくらい、頼って欲しい、なんて...ね。」
僕はそこで気づいた。
嗚呼、僕はAさんにこんなにも思われているんだ。
これ以上心配させる訳には行かない...
敦「A...さん...
夢で、孤児院の記憶を見たんです...
僕は1人では何も出来なくて...今もAさんに迷惑かけてばかりで...！」
「敦君、私は迷惑なんて...」
敦「やっぱり...！
僕なんて...
こんな駄目な奴なんて...」
次々と溢れ出る言葉と涙を僕は止めることが出来なかった。
嗚呼、又Aさんに悲しそうな顔をさせてしまった
本当に駄目な奴だな、僕は...
こんな僕なんて...
僕なんて...
敦「いっそ、死んでしまえばいいのでしょう...」
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作者名：優希 | 作成日時：2016年5月5日 19時
