それでも離れるには惜しくて ページ9
・
｢え、なに、君たちいつのまにそんな仲になったの｣
朝、教室に入ってきた星導くんに開口一番そう言われてしまった。
理由は明白、私に後ろから抱きつく彼の存在だろう。
時折首に顔を埋めてきてくすぐったい。
｢ロウ、さすがの私もそう思う｣
結果から言えば、昨日は私たちの関係が変わることもなく、ただ単にキスをしただけで終わった。
別に私のはじめてを差し出しても良かったのだが、彼がそんな人間でないことは分かりきっていたしなにより初体験が学校なのはなかなかにコアだと思う。
はじめてというものは勿論大事だし、私もそれは理解している。
まあ、いとも簡単にファーストキスは奪われてしまったが。
｢んー、いや、こいつほっといたら勝手に死んでそう｣
眠いのだろう、いつもより低く掠れた声でそう答える彼は昨日の一件で何かが変わったらしい。
｢ふふ、すきよ｣
勿論私の恋心は健在で、彼の声が耳元でする度にときめいている。
｢え、これが世でいうところのバカップルってやつですか？｣
心底気持ち悪い、といった目でこちらを見る星導くん。
｢付き合ってないわよ。まだ私の片思い｣
そう答えれば眉間のシワがよりいっそう深くなってしまった。私も可笑しいとは思うけれど、幸せなので許そう。
｢安心しろ、俺がお前にマーキングしといてやるから｣
急な甘さに脳が焼き切れそうだ。なんだか気持ち悪い。
笑う彼は、どうやら罪悪感でおかしくなってしまったらしい。
｢それが貴方の愛？｣
くだらない文字列に目を通す私は彼にそう問うたが、彼はははっと笑いをこぼしてまさか、と言った
｢でも、お前を番にするのも悪くねえかもな｣
嘘つき。私の事なんてどうも思ってないくせによく言うわよ、ほんと。
でも私は馬鹿だから、そんな貴方の甘い言葉に惑わされてあげるの。
｢あら、そう？だったら私とデート、してくれるわよね？｣
そう言えば彼はそうきたか、と呟いて勿論。と返した。
そうして手に入れたのは彼の連絡先。既に周りからの嫉妬や羨望の眼差しに胃がキリキリと痛むような気がしたが、彼はそれを気にする様子もなく、私にくっつく。
望んでやっている訳では無いだろうに。手の込んだ恋人ごっこだなあ、なんて思って彼の顔を覗くと当たり前のように鋭くこちらを睨む眼があった。
少しの好意を感じ取れる目線に、少しだけ心が躍る。彼に週末、所謂お家デートを取り付ければ彼はニヤリと笑った。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 214人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
わたし(プロフ) - 翡翠さん» もったいないお言葉ありがとうございます😿‼️めちゃくちゃ嬉しいです…（；_；）沢山可愛いお話書けるようにがんばります🖐🏻 (3月21日 0時) (
レス) id: 8fbd389275 (このIDを非表示/違反報告)
さくら - 狼さん推しでもないのについつい惹き込まれて読んでしまいました…💗蛸さん推しなのであとがきで刺されました💘😇次回作も楽しみに待たせていただきます😆 (3月19日 20時) (レス) @page17 id: 93744aa2ce (このIDを非表示/違反報告)
翡翠(プロフ) - 完結おめでとうございます❕世界で一番好きだと言える作品&作者様にお会いできて嬉しい限りです（ ; ; ）次回作もお待ちしてます︎‼︎頑張ってください‼︎ (3月16日 14時) (レス) @page17 id: e51a31b13f (このIDを非表示/違反報告)
紅奈虹夢＠虹茶(プロフ) - .....最高でした！ (3月16日 0時) (レス) id: 763d4d21f9 (このIDを非表示/違反報告)
るぅ(プロフ) - 主人公とロウくんとの絡みが好きすぎて…！！狂愛ってやつですかね？どんどん堕ちていくのが堪らなく好きです！！ (3月15日 13時) (レス) @page14 id: be2ad56f0c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：わたし | 作成日時：2024年3月13日 8時
