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第八色 ページ8

「お前ら次の道どっち?」

帰りの道の途中で桃太郎が四人に尋ねる。その言葉に、そういえばみんなで帰るのは初めてだな、とAは今までの帰り道を思い出した。

「私は左」

「オレ右」

「俺も桃と一緒、右」

「ボク左、Aちゃんと一緒だ!」

「チッ、てことは俺泣きボクロちびと一緒なのか」

ぎゃあぎゃあと喧嘩を始める二人をよそに、Aはじゃあここでバイバイだねー、と右に曲がる年上の友人達に手を振る。

二人の背中が小さくなり、振り返るとまだ言い争いを続けている二人。中指を突き立てて卯月を罵るすずめや、そのすずめに噛み付く勢いで突進する卯月にAは気が滅入った。

「二人とも私やあの二人には優しいのに」

どうして揃うと喧嘩ばっかりなんだ、とイヤイヤ期の息子を持つ母親のような顔をしてため息をつく。

とにかく早くしないと暗くなるから帰るよ、と二人の間に割って入って手を引いて歩いていく。Aの後方から出る二人の狼狽えた声が辺りに響いた。

「え、ちょっとAちゃん! 手繋がなくても大丈夫だって!」

「そ、そうですよ! ちゃんと歩けますから」

そんな抗議の言葉をまるで聞こえないとばかりに、Aはキツく二人の手を片方ずつ握ったまま歩いていく。後ろを歩く二人はといえば、彼女のこの態度に観念したとばかりに大人しく手を引かれて歩いている。

その気まづい沈黙に一番に音を上げたのはすずめだった。恐る恐ると言った様子で自分よりもいくらか背の低い少女に声をかける。

「あの、Aさん?」

「なぁにぃー?」

Aの妙に間延びした声に二人は震え上がった。Aは怒ると妙な話し方をするようになる、と前に桃太郎が言っていたのを思い出した。二人は彼女を完全に怒らせてしまったことをようやく理解した。

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ゆな.(プロフ) - ゆきのさん» わぁ,!嬉しいです。!!!千鶴くん。出るの楽しみ待ってます!私,千鶴くん好きなんですよ, (2022年2月1日 0時) (レス) id: 1db146df50 (このIDを非表示/違反報告)
ゆきの(プロフ) - (名前)ゆなさん» 楽しみにしてくださってて嬉しいです! 千鶴くんも少しですが出てもらう予定なので楽しみにしててください! コメント嬉しいです。ありがとうございます! (2021年4月28日 6時) (レス) id: 4db9a2212a (このIDを非表示/違反報告)
(名前)ゆな(プロフ) - わぁあわ!!もしかして!千鶴くんもでますか。?!(( 続き楽しみに待ってます! (2021年2月21日 21時) (レス) id: 818c24f191 (このIDを非表示/違反報告)
ゆきの(プロフ) - 青い猫さん» 作品見てくださってありがとうございます! まだ全然小説ないから悲しいですよね…。できる範囲で頑張るので、良ければこれからもよろしくお願いします。 (2021年1月20日 11時) (レス) id: 4db9a2212a (このIDを非表示/違反報告)
ゆきの(プロフ) - ぱしょさん» 長い間返信せずにすみません。続きを楽しみにしてくださってて嬉しいです! (2021年1月20日 11時) (レス) id: 4db9a2212a (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ゆきの | 作成日時:2019年8月29日 14時

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