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「じーちゃん、元気してっかなぁ」
最後の呪霊を払ってから、約30分経った。
高専から近い(当社比)こともあり、自分たちの足で行ったからには、自分たちの足で戻らなくてはならない。
木々が空の両脇を隠し始めた頃、ぽつりと虎杖が呟く。
いつもハキハキ喋る虎杖とは似ても似つかず、独り言かと思い、返事をするかどうか迷う。
「…や、こうやってしみじみしてたら怒られる気がする!!!」
突然いつもの虎杖が帰ってくる。
「怒られるの?」
「そ、怒られる」
歩きながらフードを軽く直して、微笑む。
その目が一瞬、どこか遠くを見つめたのを私は見逃さなかった。
「おじいちゃん、元気にしてたらいいね」
.
まっすぐ前を見ながら言う。
自分たちの進むべき方向を見ながら。
否、進まざるを得ない方向を。
日が落ちる速さは、なんたるものか。
世界が橙色に、闇色に、染まっていく。
虎杖は、少し驚いたような表情を浮かべ、静かにこう言った。
.
.
「…だな」
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作者名:もちのあじ | 作成日時:2021年2月7日 23時