【文スト】文豪さん、反応記録帳。五冊目

＊感情が消えてもずっと作り笑いをしていた ページ36

「ふふ、何それ…面白い」


中島敦
「です、よね…」
最近元気の無い貴女を笑わせようと意気込んで、笑い話を話したものの、返ってきたのは乾いた笑い声。
「Aさん、お腹すいてません？」
そうだ！と思い出した冷蔵庫の中にある、洋菓子。
また貴女の本当の笑顔が見られる様に。
「お皿は…これじゃ小さすぎるか」


太宰治
「そうだろう！私のとっておきの話だからね」
そう云い切ると、貴女と目線を合わせる。
「…これは、偽りの笑顔だと思うかい？」
そこには彼の悲しそうな笑顔が。
偽りなんかじゃない。
本心から出た悲しい笑顔。
「…変な事を聞いたね！忘れてくれ給え！！」


国木田独歩
「……俺には判るぞ」
何が？と不思議そうな顔をする貴女に、心痛める。
「…お前が、お、お前が」
何故かどんどん熱くなってくる目頭。
「……」
歯を食いしばって必死に涙を堪える。
その間も不安そうに見つめる貴女。


福沢諭吉
「乱歩から聞いた」
失敗だったか、と一人思惑に耽ける。
「…確か甘味が冷蔵庫にある」
その言葉にスタスタと歩いて行く貴女。
感情が無くなったのか、はたまた表現出来なくなっただけなのか。
せめて後者であれと願う彼。


江戸川乱歩
「ねぇ、気を使って笑うの辞めてよ」
ゆっくりと貴女の作った笑顔が解けていく。
「無表情でも別に良いから、」
「嘘、付かないでよ」
何時もの自信満々な声色は何処へやら。
小さな声で言葉を紡ぐ。

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