【文スト】いいえ、新聞社です。【クロスオーバー】 (ページ25)

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『ちょーっと研究失敗しちゃったんだ。ちょーっと。まあ帰る方法は分かってるし、本当に問題なく帰れるって』

のうのうと研究結果だの他の研究について語る謎の男Aにいい加減ムカついたのか、二葉亭は異能力『浮雲』を発動させて牢を破った。

自分の血を使って無理でもしたんじゃないかと北原がハラハラし出して脈の確認をするが、二葉亭の血色は悪くないし徳冨の耳も血液が消えた音は聞いてないと言うので何とか落ち着く。
その代わり謎の男Aがふらりと足元が覚束なくなったように揺れたので、こいつの血を使ったんだなと理解した。

謎の男Aが見開いた目で此方を見据えるけれども全員惜しみなくスルースキルを発揮する。
「マスコミはスルースキルを培わないとやってらんないんだよッ！！」とは社員の言葉。いつもお疲れ様です。
砂だらけの手を払ったり体に付いた埃などをはたき落としながら四人は立ち上がる。
謎の男Aは見開いていた目を一度閉じると、何を思ったのかイィ一ヒッヒッヒッヒとまた笑い出した。異能を解除していなかった徳冨が思わず耳を塞ぐ。

『これは驚いた。やれやれ……まあ最初からね。小生は葬儀屋(アンダーテイカー)。此処の家には…まあ、ずっと前から贔屓にしてもらっているのさ』

やっと頭の中で英語を翻訳しきった小泉が「嗚呼、アンダーテイカーって此奴」と納得したように言う。
でも別に自己紹介も何も欲しかった訳ではなかった二葉亭の機嫌は急降下した。目に見えてイラついている。彼が欲しいのは帰る方法、ただそれだけだ。

家の動物たちが心配。明日の取材が心配。無事に帰れるか心配。

このブラックファイル案件において、転んだりすぐ捕まったりと取り敢えず年長者の矜持が許さない無様な姿を晒しまくった元ポートマフィアの参謀長は覇気と怒気と殺気に満ちた目で葬儀屋を睨んだ。

「あっ、執事！」

修羅場感満載の空気の中、小泉が葬儀屋の後ろを見て叫んだ。音も無くやって来た執事、もといセバスチャンは呆れたように溜息を吐いた。
馬鹿にしてるのかと思ったが、執事の頭の中には「面倒な」と言う三文字しか浮かんではいなかった。
もともと逃すつもりは無かったが、この葬儀屋が関わってくれば話が変わってくる。
子ネズミの処理程度できなくて執事が務まるのか？と主人にからかわれてしまうだろう。

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