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翌日。
林檎を齧りながらラップトップパソコンを弄る北原の元に、黒縁眼鏡でモサモサ頭の男が近づいていた。北原が嬉しそうに振り向く。
彼こそが最古参の一人であり、元ポートマフィア参謀長の二葉亭四迷である。
「おはざいます。梟に手紙届けさせたけど読んだ?」
「おはよ四迷君。読んだよ。ねえ四迷君、治君に会えるよ」
そして彼は太宰にハッキングや情報整理を教えた張本人だ。
二葉亭は露骨に嫌な顔をして、北原の向かいのデスクに乱暴に腰掛けた。
「ねえ相棒。それを一般では有難迷惑と言うのを知ってる?」
「知ーらない。六年振りなんだから優しくしてあげなよ」
そして、二葉亭は太宰の事が微妙に苦手である。
幾度任務中に自 殺やら何やらで予定を引っくり返されたか思い出すだけでキリがない。
最近徳冨や北原から、探偵社の国木田独歩も似たような被害に会っていると聞いて、基本他人に情を持たない二葉亭が同情したほどであった。
「二葉亭先輩。お早う御座います」
「おはざいます蘆花。時間そろそろだけど準備おっけー?」
給湯室から珈琲を両手に持ち出て来た徳冨が、久し振りに会う二葉亭に挨拶をすると、彼は今日の潜入捜査について聞いた。やる気満々である。
北原の机にカップを置いた徳冨は、その隣の自分のデスクに座ると二人にラップトップの画面を見せる。
「抜かり無いです。今回の潜入先は主に政府関係者や芸能人、財閥、金持ちなどが東都ビルに集まり行うもので、犯人は、奪い取った麻薬を政府関係者の男に渡すようです。一応私達は招待客と言う事になっています」
「招待客って事は…誰が紹介者?」
「名簿を改変しました。架空の人物です」
「ぱーふぇくとぉ」
グッと親指を立てた二葉亭が北原に向き直ると、「よろぴく」とだけ言った。物言いが若々しい男である。すると北原は林檎の芯を塵箱に投げ入れ、やれやれと溜息を吐きながら奥で寝ている小泉を呼びに行く。
数分後、北原は眠そうな目を擦っている小泉、徳冨、二葉亭を眼中に収めると、小さく静かに呟いた。
「異能力____『
すると、小泉や二葉亭、北原はタキシードに。徳冨はパーティーに馴染めるようなドレス姿になった。これでいいかな?と北原が笑む。
北原の能力は《変身》。
自分も他人も違う姿に変えられる、潜入捜査の多い新聞社を支える異能である。
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作者名:雪寝 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/tekitouni
作成日時:2023年10月3日 0時