【オリジナル】ただ在る事を求められる生き字引 (ページ1)

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生き字引ページ1

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生き字引は神が造った存在だと生き字引は知った。

体の大きさは人間でいうところの幼児。食事も排泄も必要ない体は当然発汗することも血を流すことも涙を落とすことも無い。ある意味完璧、ある意味欠損。

生き字引は神の作った世界で神の造った存在であることを知った直後、肉体年齢に見合うように喚いたり嘆いたりすることもせず、何でもなかったかのようにすぐそこにあった本を読み始めた。生き字引はコンマ数秒程度で、生き字引であるためには己が知識を有していなければならない存在であることを理解したのだ。

生き字引の住処には大量の本があった。神が贈ったものである。生き字引は気の赴くままに本を読んだ。生き字引は神に造られた存在であるために、言語に不自由はしない作りだったのが幸いした。

いずれ、本を読むのに飽きを感じた生き字引はすぐそこに広がる草原へ駆け出した。虫一匹動物一匹いない草原は花だけが咲く不思議な空間である。生と死を知らない生き字引はそこで摘んだ花が一日持たず枯れたことにずっと首を傾げていた。

生き字引は初めて"知らない"を体験した。生き字引は"知らない"に付随する無力感を知った。生き字引は無力感を"恐怖"と定義した。生き字引は"知らない"が許せなくなった。

幼い生き字引は枯れた花を無理についさっき得た知識を活用し押し花にして保管した。枯れた押し花は生き字引の恐怖の象徴だった。

生き字引はある日、望んだことが叶うことに気がついた。地球で言うところの西洋風の城に生き字引は住むので、同じく地球のアジアの国たる日本の屋敷も見て見たいと思ったのがきっかけである。
ここは神の世界であるので当然だが、知識の少ない生き字引は神が何たるかを知らなかったしこの空間が自分を生かす以外に持つ機能を知らなかった。

どーんと建った屋敷を見上げ、生き字引はふと思った。

「ぼくのほかにいきものはつくれない？」

生まれてから何百年も経った今、生き字引の心には孤独感が根付いている。生き字引はこの感情を知らなかったが、一般的に定義するのであれば生き字引は寂しいのである。
空はある。海もある。大地もある。しかしいのちは、生き字引しか持っていない。喋るのは生き字引だけ、動くのも生き字引だけ。

神は生き字引の疑問に答えた。

「この世界はお前のもの、命はお前にしか創造できない」

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