五話 ページ7
弦を手繰り寄せると、おそらく医務室であろう部屋にもう片方の端がある事がわかった。
弦を張り、医務室の窓を引く。
貴女「鍵、かかってるじゃん。」
少し手まではあるが、弦を鍵穴に入れて解除する。
貴女「よし、空いた。」
窓を開け、中に入ると数時間前にあったゴールデンレトリバーのような少年が眠っていた。
私が侵入してきたことに気づかないのは疲労のせいか、それとも彼が鈍いせいか。
年齢よりも幼く見える寝顔は男であっても可愛い。
貴女「こんなに近くに曲者がいるのにぐっすり寝てるなんて…。」
全く起きる気配のない少年のほっぺを指でつつく。
貴女「うわっ、すごい弾力!」
男子高校生にしては柔らかい頬は癖になってしまいそうで、何度もつついてしまう。
月明かりに照らされた顔は男性というよりは少年。
貴女「まつげ長いし、髪サラサラ。女子かよ。」
犬のような性格とサラサラの髪がより、犬ぽさを感じさせて、つい頭を撫でてしまう。
灰原「んっ、誰…?」
少し眉間に皺を寄せた後、ゆっくりと大きな瞳が開く。
貴女「こんばんは。数時間ぶりだね、ゴールデンレトリバーくん。」
灰原「えっ?!」
驚くゴールデン君の口を手で塞ぐ。
貴女「しぃーっ!大声だしたら、ばれちゃうでしょ!君、声大きいんだから少し落として!」
そう言いかけると、首を縦にふったので手を離す。
灰原「なんでここに?あと、なんでゴールデンレトリバーなんですか?」
質問が一気に二つも飛んでくるなんて、遠慮がないな。
貴女「まあ、色々あって行方をくらませなきゃならなくてね。あと、私は君の名前知らないし、大きくて素直なところがゴールデンレトリバーみたいだったから。」
灰原「あっ、そっか。僕、灰原雄って言います!昼間はありがとうございました。」
純粋そうな笑顔でお礼を言うこの子に警戒心はないのだろうか。
貴女「ご丁寧にどうも。じゃあ、雄ね。私は髏々宮A。傷の具合はどう?」
昼間に縫合した腕を指でなぞる。
灰原「Aさんが治療してくれたおかげで、綺麗に治りました!」
治った…ね。
貴女「Aでいいし、敬語もいらないよ。治ったならいいけど糸がまだ残ってるだろうから、傷を見せてもらえないかな?」
灰原「いいですよ!」
腕を捲って見せてくる雄は全く疑ってくる様子がない。
貴女「へぇ、綺麗に治ってるね。それに…
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ラッキー - はじめまして。神小説堀当てて舞い上がってる者です。これからも更新待っています。頑張ってください。 (2021年3月5日 23時) (レス) id: 26b27daa61 (このIDを非表示/違反報告)
真柴白(面白い)♪ - 中々見ない小説のタイプですが!!面白そうですね。更新待ってます!!! (2021年3月2日 4時) (レス) id: b8cb4c9ad0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:雪菜 | 作成日時:2021年2月18日 12時