:Re インゲニウム �� ページ50
.
倒れる前に切られた二の腕から血が溢れる。然し、そんなものを気にしている余裕等僕には無かった。ぐっと拳を握り、今の僕の最大限を言葉にして、形にする。
｢折れるわけにはいかない……俺が折れれば、インゲニウムは死んでしまう。｣
｢論外。｣
｢論外、ね。俺からしたらお前が論外だよ。｣
｢！｣
突如近くで聞こえた声に、ヒーロー殺しが持ち前の反応速度で横に避ける。ドガンと重々しい音を立てて先程ヒーロー殺しの居た壁を砕いた蹴りは、動けなかった筈のAくんのもので。その場の全員が不意をつかれた。どうして、個性は。
｢OはOでも、個人差で持ち時間違うのかもねぇ。俺もう動けるけど、デクくんまだだし。……本当はこのまま傍観者で終わろうと思ってたんだけどさぁ、やっぱ無理だわ。｣
ごめんね、邪魔しちゃって。そう言って此方を振り返り申し訳なさそうに眉を下げ笑うAくんに、思わず首を横に振る。邪魔も何も、だ。巻き込んでしまったのは俺の方なはずで、何故彼がそんな事を言うのかわからない。
｢ヒーロー殺し、ステイン。オールマイトというヒーローに憧れを抱き、また今のヒーロー飽和社会に絶望を感じヒーロー殺しを始めた……その狂信とまで言えるオールマイトへの崇拝は一向に構わないよぉ、個人の自由だし。｣
｢………何が言いたい。｣
｢可愛い可愛いうちの子達に手ぇ出した事、少なからず俺はムカついてるわけ。自分を見つめ直す大事な切っ掛けにはなったかもしんないけど、それはそれこれはこれ。……さっきから聞いてればオールマイトは特別みたいじゃん。｣
その場も誰も、声を発さずに次の言葉を待つ。何が言いたいのかさっぱり読めないAくんの表情は、以前唇がゆるく弧を描くのみだ。
｢オールマイトだって、私欲の塊だよ。人間は等しく、ね。誰が特別なんてことはない。｣
｢……オールマイトは、ヒーローだ。オールマイトこそ、オールマイトだけが……！｣
｢オールマイトだって人間だよ。エンデヴァーだって、そこに転がってる彼だって、みんな等しくヒーローであり人間。｣
衝撃だった。当たり前の事なのに、だ。オールマイトだって人間、そりゃあそうさ。それなのに、私欲の塊だという言葉も、等しく人間なんだという言葉も、全部が衝撃だった。そして、それはきっと緑谷くんも、轟くんも私欲の塊だという事で。先程まで自分に感じていた嫌な部分の名称であるそれが、彼らにもあるだなんて。頭の中が一気に混乱状態だ。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 466人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品が参加のイベント 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
じゃがりこ(プロフ) - 続き楽しみにしてます！ (2018年11月4日 15時) (
レス) id: f3618771b7 (このIDを非表示/違反報告)
ゆきねこ。(プロフ) - ゆーとさん» ああ、ごめんなさい！教えて下さりありがとうございます！ (2018年9月27日 15時) (レス) id: 819d312a56 (このIDを非表示/違反報告)
ゆーと - とても面白く、一気読みさせていただいているのですが、Re:インゲニウム�△�｢OはOでも〜｣とありますが、AOはA型、BOはB型になり、O型になるのはOOだけですよ (2018年9月27日 15時) (レス) id: f375cefe03 (このIDを非表示/違反報告)
ゆきねこ。(プロフ) - 瑞稀さん» ありがとうございますー！そう言って貰えて嬉しいです…！頑張ります！ (2018年4月30日 21時) (レス) id: 819d312a56 (このIDを非表示/違反報告)
瑞稀(プロフ) - いいところで…！！！夢主くんの性格大好きです！！今後どーなるのか気になります！更新楽しみにしてます！！ (2018年4月30日 21時) (レス) id: be8945b53e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ゆきねこ。 | 作者ホームページ：
作成日時：2018年2月23日 2時
