真夏のお前は罪な太陽 ( 緑×橙 ) (ページ9)

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9. 芽生えページ9

( orange side )

「そういえば、なんでさっきあの部屋に俺がいるってわかったん？」

3人で歩く廊下で、マネージャーさんに聞こえないようにそっと耳打ち。

「いや…マネージャーがマル探してたから俺も適当に周りぶらぶらしてたらたまたまそこ見つけてん。なんとなくやで？居りそうな気ぃしてドア開けてん」

まさかほんまに居るとは思わんかったけどな、って。

「そ…なんや。ありがとうね、ほんま」

言うたら、手首で口元隠した裕ちん。

「さっきからそないありがとう言われたら照れるわ」

「あはっ、裕ちん可愛いっ」

「…お前今日何回俺のことからかったら気ぃすむん？」

なんてやりとりしてたら、局を出るまでの距離なんてあっという間で。降っていた雨もすっかり止んで、きれいなオレンジ色の空の下で、俺たちはそれぞれ待機してた車に乗るために別れる。

「それじゃ」

腕を挙げて別れのジェスチャーをする裕ちんに、僕も「またね」って手を降る。
お互いに背中向けて、向かうべき方向へ足を進めようとしたとき。

「あ、まって」
「なぁマル」

振り返って裕ちん留めようとしたら、重なったふたりの声。思わぬ偶然に俺らは見つめあって、なんだかそれが照れくさい。

「なあに？先言うて？」

聞いたら、いや大したことやないんやけど、って前置きの後に、

「マル、今日暇？」聞き返されて。

「ん、暇。どうしたん？」

「マルん家行ってもええ？」

用件聞いて、思わず笑ってしまう。裕ちんが不思議そうに俺を見つめる。

「ううん。あのね、俺もおんなじこと言おうと思ってた」

とりあえず今から俺は家に帰って、ラジオ特番の仕事が終わった裕ちんから連絡を貰うのを待つってことで解散。

車内から見える窓の外。走れば走るほど移り変わってく都会の景色。
はしゃぐ子供の手を引くその家族や、楽しそうに並んで歩くカップルもいて。
みんな、幸せそう。

だけどその幸せはきっと、彼らが今までの人生の中で涙流して苦労して、それで手に入れたモノなんやろな。

勝手にそんなこと考えたら、ほんのすこし楽になれた気がして。

揺れる車内で目を閉じたら、いつのまにか眠ってた。