真夏のお前は罪な太陽 ( 緑×橙 ) (ページ3)

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3. 壁ページ3

(green side)

言ってすぐに、はっと手の甲で口元を隠した____照れた時の、マルの癖。

...なに、それ。
そんな反応されたら、なんか変な気分になる。

俺に彼女がいたのが嫌？

ああ、もしかしたら...いや、まさか、ね。

"そういうこと"が、あるのは知ってた。ただ、俺には全く関係のない話だって、一切の興味も持たんと生きてきた。

せやからありえへんって、絶対ないって、思ってはいるんやけど

「...俺のこと、好きなん？」

潤んだ赤い瞳は驚いたように見開いて、一度俺を捉えたけどすぐに、別の方を向く。
否定も肯定もせんと、ひたすら黙ったままのその態度。
なんですぐ"違う"って言わへんの。

嘘...やろ？

やって、俺らはメンバーで、友達で、それに

.........男同士。

「......ありえへんやろ、普通」

思わず心の声を漏らす。

途端にマルは立ち上がると、俺を見下ろして叫んだ。

「...っ、そんなんじゃ、ないから！！」

久しぶりに見た、大きな声を上げるマルは、泣いていた。
あまりの出来事に、俺も呆然と彼を見上げることしかできなくて。

「あ、ちょっ...待って！マル！」

慌ててそう呼んだ時に、勢いよく玄関の扉が閉まる音が聞こえた。

俺は、どうしたらよかってん...

湧き上がる複雑な感情を整理できぬまま、重たい腰を上げる。
普段に増してからんとしたような一人きりの部屋で、はぁっと深いため息が漏れる。

ひとまず落ち着こうとして、食器を片付ける為にキッチンに立つ。
同時に、リビングの方から軽快な音楽を鳴らす携帯。

それだけで、ただでさえ重荷を背負っていた心の質量が一気に上がる。

「もしもし」

『もしもし忠義？いまなにしてるの？』

いつもより甘い声に聞こえるのは、さっきまで男ばかりと話していたからかもしれない。

「いまメンバーと家で飲んで、終わったとこ」

そう、"メンバー"と。

「そっちは？」

『わたしはね...』

どうでもいい、いつもの会話。

声しか聞こえないあいつが想像してるであろう俺の気持ちは、実際と正反対。多分今俺、顔、死んでる。

それから数分話したら、今日最後の任務、【１日１回の電話】は終了。

「...めんどくさ」呟いた。

この時の俺は、まだ知らない。

茶の間から見ていた壁外の世界で、まさか自分が主人公になる未来がくるなんて。