三十一輪 ページ31
一体彼は何を言っているのだろう、と酸素不足でくらくらする脳で考える。
(そうか、これも彼らの口説き文句の一つだ！)
お客さんにそう言って喜ばせて通わせるのだな、とそう考えて納得させる。
(じゃないと、本気だなんて有り得ないし…。)
「あ、今花魁の口説き文句の一つって思ったでしょ？違うからね。」
浦田さんに考えていたことを当てられてしまい、ぎくっとする。
「お金はいらないからAを頂戴。」
浦田さんにぐいっと手首を引かれ至近距離で見つめられてドキ、とする。
「ね？だから今日も来いよ？」
「ぇ、あ…」
彼の真剣な眼差しに耐えられなくて、目を逸らす。
「はいはい、じゃあまた夜にね！」
そのまま彼に背中を押されて大門を出てしまい、結局断れなかった。
1度振り返って見た彼はこちらに手を振ってにこにこと笑っていた。
✻✻✻
「なっ、なにあれ？！」
人が沢山いる大通りにも構わず、私は大声をだした。
その大声で私に向けられる人々の奇妙なものをみる目も今は気にしている余裕がない。
(き、キスしたんだよね…？私…。)
「〜〜〜〜〜〜っ！」
先程のことが脳裏に鮮明に浮かび上がり声にもならない声をあげる。
(夢…では…)
未だ現実として受け入れられない私は頬をぎゅーっと捻った。
「げんじつ…」
いつもよりはっきりと感じた痛みに肩を落とす。
浦田さんの私を射る真剣な眼差しと甘いキス。
どちらも初めて経験したもので、この熱をどうしたらさませるのか全く分からない。
新たにみた彼の一面に頭を抱える。
彼の本職はお客さんとの恋愛ごと。だから彼にとって甘い台詞を囁くのもキスをするのも別に特別なことでは無い。
(私にだけ言っているんじゃない、きっとそう。)
そう思おうとするも、彼の言葉が頭の中で反芻してため息を着く。
「本気って、なに…」
✻✻✻
悶々とした気持ちを抱えながらも帰路につき、今は家の前。
私は別の問題に頭を抱えていた。
(絶対何か言われるだろうな…)
昨晩、私は遊郭で過ごした。つまり、朝帰りということ。
「はぁ……」
憂鬱な気分でいながら、1つしかない気のせいかいつもより重たい家の西洋扉をぐ、とおした。
「ただいま帰りました〜…。」
小声でそう言ってそろりと家に入る。
玄関の灯りはついていなくて、誰もいないのか、と辺りを見回す。
(ラッキーだ！この間に部屋に戻って…)
「あら、おかえりなさい。」
その声にさー、と血の気が引いていく。
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藍瑠(プロフ) - 夜さん» ありがとうございます！そう言って頂けて本当に嬉しいです。続編もよろしくお願いします！ (2022年3月15日 16時) (
レス) id: 52af00e4b1 (このIDを非表示/違反報告)
藍瑠(プロフ) - ウルさん» ありがとうございます！嬉しいです、続編もよろしくお願いします！ (2022年3月15日 16時) (レス) id: 52af00e4b1 (このIDを非表示/違反報告)
藍瑠(プロフ) - 匿名希望さん» ありがとうございます！更新頑張ります！ (2022年3月15日 16時) (レス) id: 52af00e4b1 (このIDを非表示/違反報告)
藍瑠(プロフ) - Haoto-ハオトさん» ありがとうございます！更新不定期ですが、気長にお待ち頂けると幸いです！ (2022年3月15日 16時) (レス) id: 52af00e4b1 (このIDを非表示/違反報告)
藍瑠(プロフ) - えゆさん» ありがとうございます！続編もよろしくお願いします！ (2022年3月15日 16時) (レス) id: 52af00e4b1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：藍瑠 | 作成日時：2020年3月16日 20時
