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二十四輪 ページ24

「大門もう閉まってんから出れねぇぞ。」

「……は?」
浦田花魁の言葉が理解出来ずに固まる。

「とんだあほ面だな。」

「いやいや出れないってどういうことですか?!」

鼻で笑う花魁の両肩をつかみ、ぶんぶんと揺すると花魁はその手を掴んでおろす。

「大門が中原唯一の出入口ってことは知ってんだろ?その大門は10時には閉められんだよ。」

格子付きの部屋の窓から外を見ると、来た頃にはまだ日のあった空がすっかり暗くなっていた。

「嘘でしょ……」

帰れないということは今日はここで過ごさなければならない。つまり私は朝帰りするということだ。

(これが知れたらなんて言われるか…)
目先の事実にズキズキと痛くなる頭を抑える。

「まぁ今夜はこの鋪で過ごせば?内儀もあんたは手厚くもてなすつもりみたいだし。」

内儀さんがそんな風に私をもてなすのは私が吉高の一人娘だからだろう。

(同じ人間でも、遊郭の外と中でこんなに扱いが違うとは…)

分かりやすく気分を沈めてしまっていたのか、花魁が「大丈夫か?」と心配そうにこちらを伺ってきた。

(もう今日はどうすることもできないし、ここで休むしかなさそう…)

私は諦めて、大人しくここで過ごすことにした。

「あの…今日はもう寝ます。」

「ん?あぁ、じゃあ寝間に行くか。」

立ち上がった浦田花魁についていけば、屏風で仕切られた2つの布団がある場所に。

(やっぱりここが寝間か…。)

部屋に抜け出す前のことを思い出しながら布団に腰をおろすと、後ろから布の擦れる音がして振り向く。

見ると、浦田花魁が打ち掛けを脱いでいるところだった。

「え…?何してるんですか…?」

私が目を見開いて尋ねると花魁は首を傾げた。

「何って、寝るんだろ?着たままだと、着物がよれる。」

「お前もそれ脱げよ。着たままだと皺になるぞ。」
そう言い、私の洋服を顎で差した。

(まさか…違うと思うけど…)

というか絶対違って欲しい、と願いながら花魁におずおずと声をかける。

「もしかして花魁もここで休まれるんですか…?」

「ここ以外ねぇだろ。」

ぶっきらぼうに言い放った花魁に全力で首を振って拒否を示す。

「無理です!!!」

遊郭に泊まるだけじゃなくて、遊男と同じ部屋で寝るなんてたまったもんじゃない。

「どういう意味だそれ!!!」

「手だしますよね?!」

「そんな節操無しじゃねぇ!!」

「前科ありじゃないですか!!」

「未遂だろ!!」

お互い言い争い、はぁはぁと肩で息をする。

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設定タグ:歌い手 , 浦島坂田船 , 花魁   
作品ジャンル:恋愛
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藍瑠(プロフ) - 夜さん» ありがとうございます!そう言って頂けて本当に嬉しいです。続編もよろしくお願いします! (2022年3月15日 16時) (レス) id: 52af00e4b1 (このIDを非表示/違反報告)
藍瑠(プロフ) - ウルさん» ありがとうございます!嬉しいです、続編もよろしくお願いします! (2022年3月15日 16時) (レス) id: 52af00e4b1 (このIDを非表示/違反報告)
藍瑠(プロフ) - 匿名希望さん» ありがとうございます!更新頑張ります! (2022年3月15日 16時) (レス) id: 52af00e4b1 (このIDを非表示/違反報告)
藍瑠(プロフ) - Haoto-ハオトさん» ありがとうございます!更新不定期ですが、気長にお待ち頂けると幸いです! (2022年3月15日 16時) (レス) id: 52af00e4b1 (このIDを非表示/違反報告)
藍瑠(プロフ) - えゆさん» ありがとうございます!続編もよろしくお願いします! (2022年3月15日 16時) (レス) id: 52af00e4b1 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:藍瑠 | 作成日時:2020年3月16日 20時

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