十八輪 ページ18
それを“知っている“とはいえ、“見たこと“など無かった。
いやそもそも人の情事を見る経験など、人生で無いのが普通なのだろうが
初めて見る目の前の光景に加え、女性が“優希ちゃん“であるということが更に私をその場から動けなくさせた。
優希ちゃん、美沙子ちゃん、茜ちゃんとは同じクラスなのだが、彼女はクラスの学級委員を務めている。はきはきとしていて自分の意志を強く持ち、他人に動じない性格は老中である祖父譲りなのだと話していた。
しかしすっかり雌の顔をしている彼女は男性に身を任せきっていて、いつもの優希ちゃんの面影など感じられない。
普段からは想像出来ないあられもない彼女の姿に私はすっかり動揺し切っていた。
他人の情事、というだけでなく、友人の情事を見ることになるとは……
最悪だ、今日はトコトンついてない。
厄日か、と深く溜息をつき、顔をあげた時、優希ちゃんの上に跨った男性と目が合ってしまった。
(やば…!見つかった…!)
反射的に腰をあげる。
しかし焦る私とは対照的に、男性は余裕そうにふ、と笑ってみせた。
(なっ………!)
私は自身の頬が一気に熱くなるのを感じた。
汗か涙かはたまた蜜か__
湿った髪をかき上げ、笑う彼は実に妖艶、という言葉が似合っていた。
確か彼は見世にいた花魁で、名は志麻、だったと思う。
(成程これが花魁の色気というものか、)
悔しいが私は目の前の彼から目が離せなかった。
すると、突然何者かに後ろから手で口を塞がれる。
「?!…んん!?」
私が後ろを向こうとすると何者かは耳元で囁いた。
「しー、じっとしておくんなんし、お嬢さん。」
首を出来る限り後ろに向けて見たその人物は浦田花魁だった。
浦田花魁は背と膝裏に手を回すと、髪に刺した簪をしゃらんとだけ鳴らして私をすっと姫抱きにして立ち上がった。
「え、ちょ…!」
私を抱えたまま廊下をずんずんと進む花魁を制止しようとしたが、紙切れ一枚で逃げ出した手前何も言えず口を噤んだ。
(さっ、流石に逃げ出したのは不味かった?!これから私どうなるんだろ…出禁?折檻?迷惑料取られたりとかは、、)
遊郭のことは全く分からないので、自身が何の罪に問われるのか分からない。
(取り敢えずは、内証にいる楼主につき出される…?)
遊郭の妓楼には代金未払いや荒らしなど、ご法度をおかした客をこっ酷くしばく男衆という存在があるらしい。聞くところによると、竹の棒で打たれたり、橋に吊し上げにされるとか、、
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藍瑠(プロフ) - 夜さん» ありがとうございます!そう言って頂けて本当に嬉しいです。続編もよろしくお願いします! (2022年3月15日 16時) (レス) id: 52af00e4b1 (このIDを非表示/違反報告)
藍瑠(プロフ) - ウルさん» ありがとうございます!嬉しいです、続編もよろしくお願いします! (2022年3月15日 16時) (レス) id: 52af00e4b1 (このIDを非表示/違反報告)
藍瑠(プロフ) - 匿名希望さん» ありがとうございます!更新頑張ります! (2022年3月15日 16時) (レス) id: 52af00e4b1 (このIDを非表示/違反報告)
藍瑠(プロフ) - Haoto-ハオトさん» ありがとうございます!更新不定期ですが、気長にお待ち頂けると幸いです! (2022年3月15日 16時) (レス) id: 52af00e4b1 (このIDを非表示/違反報告)
藍瑠(プロフ) - えゆさん» ありがとうございます!続編もよろしくお願いします! (2022年3月15日 16時) (レス) id: 52af00e4b1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:藍瑠 | 作成日時:2020年3月16日 20時