16話 名前を教えてはいけない ページ18
「待て。きみ、名前は教えなくていい」
鶴丸は急に真剣な顔で冷たく言った。
少女は戸惑いながら訊いた。
「な、なんで？だってつるがわたしをよぶとき名前がないと＿＿」
「名を知らなくても『きみ』と呼んでいるし、不便ではない」
「でもつるは名前教えてくれたよ？わたしもいわないと＿＿」
「俺のことをストーカーや不審者などと言ったのにか？もう警戒心がないんだな」
さっきまで優しかった鶴丸はどこに行ったのだろう。まるで別人のようだ。
鶴丸の瞳は驚くほどに冷たかった。
「でも、でも……」
何を言えばいいか分からない。
少女はうわ言のように繰り返し呟いた。
「なーんてな」
突然、頭上から明るい声が降り注いだ。
「え……？」
少女は目をぱちくりして鶴丸を見た。
肩から重い何かが下りたような感じがした。
鶴丸はあの悪戯な笑顔で言う。
「別人みたいで驚いたか？」
少女は心の中を読まれたような気がした。
「はははッ！そんなに驚いたとは。目ん玉丸くなってるぜ？」
「つる」
「どうした？まさか怒ったのか？」
少女は小さな両手で鶴丸の頬に触った。鶴丸の冷たい体温が伝わってくる。
突然のことに鶴丸は驚いている。
「きみっ、何して＿＿」
鶴丸は拒絶するように少女の手を拒もうとするが＿
＿＿ゴンッ
と鈍い音がして鶴丸と少女はお互い痛そうに頭を抑えた。
「……いたい」
少女は頭をぐらぐらと揺らした。
「当たり前だろ！いきなり頭突きなんて、きみ何考えてんだ」
「だって……」
少女の視界はしばらくチカチカと点滅していたが、やがて痛そうに頭を抑えた鶴丸の顔がはっきりと見えた。
「だって、こうでもしないとまたつるがイタズラするんだもん。だから、仕返し？」
「はぁ、きみって奴は……」
鶴丸は呆れながらため息をついた。
「とにかく、これから知らない奴に名前は教えるな。俺にもだ」
「なんで？わたしにとってつるはもうあぶない人じゃ…………ないよ？」
「最後の間はなんだ」
「なんとなく？」
知らない人に名前を教えてはいけない。
怪しい人に出会ったら助けを呼ぶこと。防犯ブザーを鳴らすこと。
そんなことは親も学校の先生も常に言っていた。
人気のない道で登下校する少女には意味のないことだったが。
でも少女にとって鶴丸が言ったことは誰が言うことよりも説得がある気がしたのだ。
「わかった。やくそくする」
少女は大きく頷いてみせた。
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サビナ(プロフ) - ここあぷりんさん» ここあぷりんさん初めまして！小説を読んで下さりありがとうございます。ただいま続編を作成中ですのでもうしばらくお待ちくださいm(_ _)mこれからもよろしくお願い致します。 (2018年1月5日 23時) (
レス) id: 2bf17c144c (このIDを非表示/違反報告)
ここあぷりん(プロフ) - 最後んとこで目からポカリ出てきたんだけど。え、もう鶴丸に会えないのこの子。やだ何それ(((謎の男…叩き斬りてぇ( ) (2018年1月5日 20時) (レス) id: d0be1279ae (このIDを非表示/違反報告)
サビナ(プロフ) - あやかさん» あやかさん初めまして！小説を読んで下さり、嬉しいお言葉までありがとうございます。最後辺りは一番頑張った部分なので、褒めて頂けてとても嬉しいです…！これからもよろしくお願い致します。 (2018年1月2日 14時) (レス) id: 2bf17c144c (このIDを非表示/違反報告)
サビナ(プロフ) - 晋陽さん» 晋陽さん初めまして！小説を読んで下さり、嬉しいお言葉までありがとうございます^ ^これからもまったり頑張りますのでよろしくお願い致します！ (2017年12月30日 10時) (レス) id: 2bf17c144c (このIDを非表示/違反報告)
晋陽 - 切ない感じがまたいいｯ！←更新がんばってください！ (2017年12月30日 9時) (レス) id: 8ef45f8c23 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：Nean＝サビナ | 作成日時：2017年10月12日 21時
