2 ページ2
兄貴はオレたちのヒーローだった。
戦隊モノやサッカーが一番カッコいいって思ってたオレたちに
「ダンス、カッコよくね? 一緒にコンテスト出ようぜ」
って言って、見よう見まねだけどダンスを覚えて・・・
練習して、上手くなって、また練習して。
そんな時間が最高の遊び場だった。
そして兄貴は一番の仲間で、心から尊敬できる人だった。
だから、あの足場に昇ってみよう、って言われた時も嬉々としてついて行った。
大きく運命が変わることなど思いもせず。
だけど・・・
あの事故の後、兄貴は「おまえら2人でコンテスト出て優勝しろよ」とも言ってくれた。
やめるのか、続けるのか・・・
どちらが正しいのかわからないまま時間が過ぎて行って、なんとなくオレたちは「踊らない」選択をした。
オレたちも・・・逃げていたのかもしれない。
・・・
「オレ、会いに行くわ」
ある日、純喜がそう言い出した。
「ほんまに兄ちゃんがあんなことしてんのとか信じられへん。悪いヤツらに脅されとるんかも知れへんやん。それに、いっぺんちゃんと話したい」
「危ないことすんなよ」
「大丈夫やって」
そう言って出かけて行ったけど・・・
一緒について行った翔也と汐恩だけが血相変えて戻ってきた。
「純喜くんが捕まった!」
「なんか高いとこへ連れてかれた。やばいんちゃう?」
高い所！
思い出すのはひとつしかない。
考える前に身体が動いて走り出す。
「蓮くん、どこ?」
「商店街の・・・裏の・・・」
それだけ言うと碧海がオレを追い抜いて走っていく。
走った。
メンバーも付いてくる。
よく考えてみたら、ヤツらはおれたち3人に起きたことをしらない。
胸に錘をかかえたまま踊ってきたオレと純喜とは違う。
だけど、ダンスを、ダンサーを、そして純喜を救いたい。
ただそれだけで走っている。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：yukilimn | 作成日時：2020年9月2日 18時
