95話 ページ10
痛ってぇ
肩を力強く握られる感覚がして目が覚めた
ただでさえ影山関係で神経を尖らせているのに何だって言うんだよ
目を瞑っても眠れなかったところ、漸く睡魔が降りてきたっつうのに
円堂、鬼道、佐久間、俺、猫村の順で横になった。俺の真正面には背を向けた佐久間がいる
だから背面には猫村がいるはずだ。俺の肩を握ってんのは猫村か
「おい、何すんだよ」
上半身を起こして隣の猫村に小声で問いかけるが反応は無い
あ？寝たままか？
そのまま顔を見つめると声は出てねぇけど、うなされているのか眉根を寄せている
…初めて見る表情だ
軽いデコピンをお見舞いしてやった
『っ』
目を開けたが眠気が勝ってるのかぼうっとしてやがる
ま、これで悪い夢も一区切りつくんじゃねぇの
「なんでもねぇよ。そのまま寝てろ」
『ん…』
呟いたかと思えば俺の服の裾を掴みやがった
ぴったりと布団同士をくっつけて並べられてんのを指摘しときゃ良かった。近すぎる
それにしても意外と甘えただねぇ？雪夜チャン
服から手を離させ、此方を向いている身体を仰向けにしてやる
肩に手をかけてそのまま押してやったら簡単に仰向けになった
…首もと緩い服着てんじゃねぇよ、見えんだろ。たとえタンクトップでも隠しとくもんだぞ
乱れたタオルケットも直してやって寝床に戻る
俺も寝ないと明日に響く
目が覚めたら最初に不動の顔が視界に入った
それと同時に昨夜の兄との会話を思い出す
私は罪悪感を抱えるほどあの人に肩入れしてる？分からない
考えたくないし起き上がるのが億劫なのでそのまま彼の寝顔を観察する
私が眠りに落ちる前まで背中しか見えなかったけど寝返り打ったんだな
目付きが悪いと思ってたけど目の縁を型どる下睫毛が長い
それにしても額に垂れ下がっている髪が気になる
中心部分は長いけど目に当たらないのかな。私は前髪伸びたら目に入って痒くなる
あ、意外と手触りがいい。ふわふわしてる
ついでに頬を撫でる。こっちは普通の感触だ
特別柔らかいわけでも固いわけでもない
韓国戦のときお互いの頬を引っ張ったりつねったりしたっけ？こいつの、伸びはするんだよな
考えていたらパシッと音がつくほどに勢いよく手を取られた
これで一気に目が覚めた
『起きてる？』
小声で問うが反応は無い。ならあれは反射か何か
普通は隣で寝てる恋人でもなんでもない異性の身体に触れてるなんて可笑しいものなんだから
疲れてるのかも、変なことをしてしまった
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作者名：ヌラ | 作成日時：2022年3月6日 16時
