溺れる想い[Fischer's] (ページ32)

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真実はページ32

コンコンとノックの音が響きドアが開く

モ「A…」

『迷惑かけてごめんね、来てくれてありがと。』

モトキくんは目を合わせてくれなかった。

『あのさ。私小さい時落ちたんだよね。木から』

モ「ごめん。俺のせいで…」

『そんなふうに思ってないから。だから全部教えて欲しい、私が目を覚まさなかった間に、みんなに何があったのか』

モ「Aは後悔しないの？」

『知らない方がいいから家族もアキラもみんなもこの話を遠ざけてたんだよね。でもなんかそれって嫌だから』

モ「そっか…わかった。Aが聞きたいなら」

モトキくんは私の目を見て一つ一つ話してくれた。

モ「俺とAは2人できに登ってみんなを見下ろしてて、Aが俺のことを好きって言ってくれたんだ。
それで照れたAは滑り落ちて頭を打った。俺も降りてずっと名前を呼んでた。
でも目を覚ましてくれなかった。
周りにいた知らない大人が救急車を呼んでくれてそのままAは運ばれて行った。俺たちはまだガキだったからそのまま帰るように言われた。
駆けつけたAの母さんに冷たい目で見られてもう関わらないでって言われたのも覚えてるよ。
岩瀬にも…二度とAに近づくなってね。」

モ「運ばれてから目を覚ましたっていう連絡を聞いたのは5日後。岩瀬から聞いたんだ。でも岩瀬は泣いてた。
目を覚ましたAは岩瀬をみて、だれ？って言ったらしいんだ。医者が俺らの写真を見せても俺らのことはだれも覚えていなかったって。
俺たちはすごくショックを受けたよ。みんなAが好きだったからね。」

モ「そのまま回復したAはご家族と引っ越した。俺たちのことを思い出すことなくね。岩瀬はその時その場にいなかったからAのご家族から嫌われてなくてAの進学先を聞いて同じ高校に行ったんだって。
俺たちはどうすることもできなくて…ただ悔しくて…でも引きずってもどうしようもないって前を向くことにしてたんだ」

ぼんやりと頭の奥でかかっていたもやが消えて行く感覚
私が夢で見たオレンジの空は木の上から見たものだったのだろう

モ「だからあの日Aに会えてよかった。もう失いたくないって。悲しんでる顔を見たくなった。でも…また傷つけちゃった。岩瀬に俺のせいって言われた。だから…最後にあの日の答えを合わせて欲しいんだ」