人生とはなにか。 (ページ1)

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初めまして。ページ1

悪い夢を見た。

ずっと、小さい頃から見ている夢。

いつなんの記憶なのか、それとも少しの間地獄にいたのか、身体には嫌な汗が流れている。

学校の帰りに母と買った唐揚げが2つ、皿に乗ったまま机の上に置いてあるのに気づいてベットから足を下ろした。

(戻さなきゃ……父さんも帰ってきてる。)

焦茶の木でできた階段は家の古さを強調するかのようにギシギシと音を立てている。
ただ単に私の体重が重いかどうかは置いておいて、築29年程の我が家は15年生きている私を守っていた。

(なんか、変だ。)

何が変なのかは分からない。いつもの記憶に残らない『悪い夢』のせいなのかもしれない。ただ、この夢を見るのは1年ぶりだった。

ソレを引き離すように唐揚げをひと齧りする。
冷たくて美味しくない。レンジで温めようか。

リビングには父が座っていた。目が悪くなってから、無職の父は会社を継いだ長男の手伝いをしていた。
数年前まではこの時間はいつも母と２人きりか、姉がゲームをしていたのだが、少し寂しく思う時もあった。いざ早く帰るようになったからと言って、和気藹々と話が出来るほど父も私も互いのことを知らないのだ。

『おかえり父さん。』

「ああ、Aただいま。まさか制服のまま寝ていたのか？」

『テストで疲れてたんだよ。高校生活最初のテストだから。校舎新しすぎて落ち着かないのなんの。』

キッチンに立つ母に唐揚げを渡す。

『ごめん寝てて食べてなかった。』

「自分で温めてテーブルに出しといて。もうすぐご飯できるから。」

黒いレンジに唐揚げを突っ込む。もちろんラップをした状態だ。
ぼーっとしている間に音が鳴る。唐揚げからは白い湯気が出ていた。

椅子に座り唐揚げを箸で摘む。愛用のアリスの箸はもうボロボロになってきた。新しいものを買いに行こうか。
明日は歓迎遠足だ。動植物園は何年ぶりだろう。中学はソフトボール部で、ずっとボールを投げる日々だった。下手だったが、楽しかったのだ。デブだし胸も邪魔だった。辞めたかったが動く楽しさはやはり知ってよかったと思う。

(あ、スマホ上に置きっぱだった。)

後で取りに行こう。遠く離れた友人のメッセージを返信しなければならない。

ふと、テレビに目が行った。

なぜだか分からない。私はその時の記憶が今でも忘れられない。

何も楽しくないバラエティ番組。

赤い字幕とアラーム。

一瞬の静寂。

私は『被災者』になった。