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重岡side
「重岡くんは、記憶喪失です。」
お医者さんにそう言われたときは、頭に鈍い痛みが走った。
嘘やろ＿＿＿＿＿＿＿＿
目が覚めたとき、知らない人が俺のことを不安そうに見つめとった。
金髪でピアスのついてる男子。
その横で座っている、かわええポニテの女子。
その女子の手を握っとる、ツインテールの女子。
一歩引いたところで腕を組んで立ってるイケメン。
全員、なんか見たことあるけど、全く思い出せない。
俺の名前は重岡大毅。
15歳。
それはなぜかわかるんやけど、
俺がなんでここにおるのかもわからへん。
親の顔も、名前もわからへん。
何部やったかも、
何が好きやったんかも、
誰が好きやったんかも、
何を食べとったのかも、
どんな人だったんかも、
全部、
全部、
わからへんねん。
だから、かわええポニテの女の子が、
「なんで、なんでわかんないの！！！
ねえ、思い出してよ！！
笑ってよ！！
しげ！！！！！」
って言うとったときは、ほんまに胸が痛かった。
あの日の夜、面会時間が終わって一人になったとき、
布団にもぐって泣いた。
人生で一番泣いたってくらい。
記憶ないのにそれはちょっとおかしいけどな。
今日もあの、ポニテの、Aさんが来てくれた。
俺なんかと接してて楽しいんかなって思うけど、それは口にしたらあかん気がして言わんかった。
話してるとな、言葉の端々から、悲しみとか、寂しさ、後悔みたいなもんが、伝わってくんねん。
それ見たら急に抱き締めてあげたくなってん。
ごめんなぁ、ごめんなぁ。
俺のせいで、俺のせいでな、
って。
「抱き締めてもええ？」
そう聞いたとき、Aさんがの今まで溜め込んでたもんが、溢れたんやろな。
ボロボロ泣いとった。
俺の罪を、ちょっとでも償えたらって。
そう思った。
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作者名：まるえだまめいんげん | 作成日時：2022年10月4日 16時
