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「A、ここで、何してるん？」
心配そうに眉を下げ、少し息を切らした神ちゃんが、今、目の前に立っている。
「神ちゃんこそ、なんでここに？」
「それは・・・Aが教室におらんかったから。」
「・・・休みかも、しれないじゃん」
「いや、朝練すれ違ったから絶対学校におるはずやもん。」
「・・・急に具合が悪くなったからかもしれないじゃん」
「でもA、保健室とも、正門とも、職員室とも違う方向に走っとったやん」
「それは・・・」
全部、神ちゃんにはお見通し、か。
.
「な、ここから抜けださん？」
「え？」
突然そんな突拍子もない事を口にした神ちゃんは、その勢いのまま私の手を掴んで走り出した。
幸い今は授業中。
廊下や昇降口に、生徒はおろか、先生の姿も無い。
神ちゃんは意外と走るのが早くて、着いていくのが大変だった。
景色がぐんぐん遠ざかっていく。
流石に息が切れてきてもう限界ってところで止まった場所は、いつの日かしげと夜空を見上げたあの河原だった。
「神ちゃん、ごめん」
「・・・なにが？」
「えっ・・・いや・・・その、巻き込んじゃって。」
「そんなん、Aが謝る必要ないで？」
「でもっ」
「でもやない。俺が選んだことだから。
俺が、Aと、学校抜け出したいって思ったから、ここにおるんやろ？」
「・・・・・・うん」
そういうことで、いいのかな・・・？
.
結構家の近くの河原でも、意外と知人には会わないもんで、私たちは時間を忘れてずっとそこにいた。
お昼になって、お腹が空いて、二人でお弁当を食べた。
神ちゃんは鞄とか全部教室に置いてきちゃったから、私のお弁当をはんぶんこ。
いつものお弁当よりなんだか美味しく感じた。
.
空がオレンジ色に染まってきた頃。
「ふぁっ！」
不意に、神ちゃんが私の顔を覗きこんだ。
「ど、どうしたの・・・？」
「何があったん？」
「え？」
「今日、朝、何があったん？」
やっぱり全部、神ちゃんにはお見通しだったみたいで、
朝クラスで耳にしたことを話したら、
「やっぱりか。」
なんて言って悲しそうな顔してた。
「あのさ、
俺じゃだめなん？＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿」
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作者名：まるえだまめいんげん | 作成日時：2022年10月4日 16時
