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「？はーい。」
「ソーンか？俺だ。入るぞ。」
その声と共にドアが開き、アダムが姿を現す。兄様！と嬉しそうに駆け寄る姿に少女は少しだけ首を傾け、そのまま後ろを着いて行く。ソーンの頭を撫でていたアダムも少女に気付きふっと笑った。
「こんにちは、姫。体調はどうですか？」
「大丈夫。……アダムお兄ちゃんは？」
「頗る良好です。今日も読書ですか？」
「はい！何冊か持ってきちゃいました……駄目でしたか？」
そう言って上目遣いで兄の機嫌を伺う姿に知らず笑みが零れる。手の動きを再開させいや、と答えると花が咲く様に笑った。
えへへ、と手に擦り寄る姿が羨ましいのか、少女はコートの裾を引っ張る。無言の訴えに答えてやりながら、アダムは二人をベッドに座るよう促す。大人しく従う二人は宛ら兄妹の様であった。
ぽすん、と座ってから二人はアイコンタクトを交わし、一人分の隙間を開ける。アダムが微かに首を傾げると座って下さい、とそのスペースを叩くソーンと少女。分かった、と言うその顔は嬉しそうで、座ると同時にくっ付いてくる二人に更に深まった。
「あまりくっ付き過ぎるなよ。霜焼けになる。」
「はい、気をつけます。」
離れる気はないという意思表示には苦笑を禁じ得ない。大事な弟と姫を想っての事だったのだが、と思いながらも手は二人の頭へ向かう。撫でられながら何を思ったのか、少女が名前を呼んだ。
「どうかしましたか？」
「名前。」
「……ああ。分かった。」
ルシル。愛おしそうな声音が言葉を紡ぐ。それに満足したのかルシルは裾を掴み甘える様に体を預けた。
「ルシル、話を聞いていたか？霜焼けに、」
「お兄ちゃんの体、暖かい。」
言葉を遮る様な声。至ってのんびりとした声だが確かな熱が入ったそれに、アダムは返す言葉が見つからない。
頭を撫でてやるしか、なかった。
暫く沈黙が続く。決して嫌なものではない、沈黙。それを破ったのはルシルだった。
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