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弍佰参拾壱) 徒桜 ページ49

〜千鶴side〜




"労咳"




その言葉を聞いて、私は絶句した


だって労咳は...治らない


池田屋事件以来、
咳き込むようになった沖田さんのことが
気になってはいたけど、風邪だと思っていた


だけど、
この間の禁門の変の時にAちゃんと見たものは
それが"風邪"ではないと説明するには
十分すぎる出来事だった







A「千鶴」







Aちゃんの声でハッと我に返る







A「ごめん、手伝いできなくなった」







そう言って
私を見るAちゃんの表情は硬く、瞳には光が無い


視線は私を向いているはずなのに、
どこか遠いところを見ているようだった







A「私、急用が出来たから」




雪村「えっ、待って...」







急用ってなに??

そんな状態じゃ危ないよ



私は、引き留めようとAちゃんの腕へ手を伸ばす

しかし、それをスルりと抜けられてしまう







A「ごめんね」







そう言って走り去るAちゃんの表情は
相変わらず硬いままだった









Aちゃんは皆さんの中でも、
特に沖田さんを信用してた


二人が同じ組だからということもあるけど...
他にも理由がある気がする


それは沖田さんも同じで、平気な顔をしているけど
誰よりもAちゃんを気にかけてたし、凄く信頼していた


人がそれぞれ一つの糸で繋がっているとしたら、
Aちゃんと沖田さんの間にはもう一つの糸があるみたい




沖田さんが労咳だと知ったAちゃんの受けた衝撃は
私の受けた衝撃を遥かに上回るものだろう


もちろん、私が驚かなかったわけじゃない

私だって息が止まるほど驚いたし悲しかった







沖田「出ておいで、もういいから」







私があれこれ考えていると、沖田さんが声をかけて来た







「...!!」







柱の影から顔を出す







沖田「はい、こっちこっち」







私は言われるがまま隣に腰を下ろす







沖田「あれ、千鶴ちゃんだけ??」




「はい...Aちゃんは...」




沖田「...まぁいいや」

沖田「もしかして今の話、本気にした??」

沖田「まぁ、Aちゃんは本気にしたんだろうけど」







そう言った沖田さんの表情は悲しそうで

自分が労咳であること以上に、
それをAちゃんに知られてしまったことの方が
辛いようだった







雪村「...私、絶対に誰にも言いませんから」




沖田「ありがとう」







そう言った沖田さんは
空を見上げて目を細めていた

弍佰参拾弍) 浄化→←弍佰参拾) 絶対に



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作者名:雪姫華-yukika- | 作成日時:2024年3月17日 19時

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