月龍鬼の少女は月に願う〈第一章ノ肆〉〜薄桜鬼〜 (ページ34)

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弐佰拾漆) 歪む・肆ページ34

私の声にゆっくり振り返った

黒蓮｢白鈴、来るなって言っただろ｣

お兄ちゃんの表情には疲労が滲み
怒った言葉とは裏腹に、声音は全く覇気がなかった

｢危ないから来ちゃダメって言ったのにお兄ちゃんはいいの??｣

今、こっちに来るのは正しい選択じゃなかったかもしれない

だけど、お兄ちゃんを放ってはおけない

"何か"全てを背負うような行動に

お兄ちゃんを一人にしちゃいけない

って私の勘が警笛を鳴らしている

黒蓮｢こっちが危ないんじゃない｣

黒蓮｢"あっち"で目をつけられるだろ｣

｢バレないように気をつけてるよ｣

それに、私なんてとっくに怪しまれてるし

今更ビクビクしたって遅い

ここまで来たからには腹を括って
お姉ちゃんとお兄ちゃんと協力するべき

黒蓮｢そういう問題じゃない｣

｢でもっ...｣

"三人で協力するべき"

そう言いかけた時、お兄ちゃんの言葉で遮られる

黒蓮｢とにかく、僕の用事は終わったから今すぐ帰るぞ｣

そう言ってお兄ちゃんは私の腕を強引に掴んだ

だけど力は優しくて、
私が逃げないのを見透かしているみたい

私達の前に再び扉が開かれる

私が片足を踏み入れた時、
後ろにいたお兄ちゃんは足を止めて振り返った

｢お兄ちゃん??｣

黒蓮｢...なんでもない｣

その後、
何か呟いてたけど私には聞こえなかった

黒蓮｢行くぞ｣

振り返ったお兄ちゃんは

罪悪感や悲しみ、期待...

様々な感情が入り交じった複雑な表情をしていた

・

・

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・

｢お兄ちゃん｣

裏庭に着いて、先を歩くお兄ちゃんを呼び止める

黒蓮｢どうした??｣

｢哀燐って...誰??｣

私の言葉を聞いたお兄ちゃんは目を見開く

黒蓮｢白鈴、どこでそれを...｣

｢...お兄ちゃんのところに行く前｣

｢その人はお兄ちゃんの力を汚い力って言ってた｣

｢どういうこと??...お兄ちゃんに何かが起こってるの?!?!｣

私は今までの不安や疑問をぶつけるように声を荒らげた

黒蓮｢...そのままだよ｣

黒蓮｢僕は....淀みに負けたんだ｣

｢淀みに負けた??｣

淀みって...あの??

それに負けた??

私の頭の中で疑問がごちゃ混ぜになる

そして再び口を開こうとした時

ｶｻｯ

その時、茂みが微かに揺れる音がした