弐佰拾漆) 歪む・参 ページ33
フワッ
何とか逃げきれたみたい
それよりも...
「あんな子居たっけ」
確か星樺妃は哀燐って呼んでたけど、
星樺妃には子供は"一人"しかいないはず
それなのに"愛しき子"ってどういうことだろう
「あれっ??」
部屋の前に移動したつもりが、
裏庭に来ちゃってたみたい
力が弱くなってるせいか
最近思うように力を使えない
「見つかる前に早く部屋に戻ろう」
そう言って部屋に向かって歩きだそうとした時、
視界の隅に何かが映った
なんだろう??
「見てすぐに戻れば大丈夫」
そう言い聞かせて部屋に向かおうとしていた足を止めて
裏庭の奥に向かった
しかし、目的の場所に着いた瞬間
目を疑う光景が広がっていた
「...扉が」
そこには地上に繋がる扉が開いていた
そうだ、
お兄ちゃんはお姉ちゃんのところに行くって言ってた
だけど、扉を閉め忘れるなんて...
地上と月の繋がりは、
華家が守護家から消えた時から規制が厳しくなった
今では
王位継承権を持つ者、月ノ宮の血を引く者だけが
道を繋ぐ方法を知ってる
周囲には、その方法も
その方法を誰が知っているのかも知られちゃいけない
なのに....
「でも、扉が閉まっていないってことは、まだお兄ちゃんが帰ってきてないってこと...」
「追いかけなくちゃ」
そして、お兄ちゃんを迎えに行くために
私も扉に足を踏み入れた
・
・
・
・
シュウウゥゥウウ
扉を通った先には、夜の街が広がっていた
そして私は今屋根の上に立っている
「あっ...」
少し先にお兄ちゃんが居る
お兄ちゃんは弓を引いてどこかを狙っているみたい
あそこは...
「お姉ちゃんのいる場所...??」
前に一回だけ行ったことがある場所だ
パァァアアンッ!!!!
お兄ちゃんの手から大きく音をたてて矢が放たれる
目標に矢が刺さったことを確認したお兄ちゃんは
暫くの間 なにか考え込んでいるようだった
強く握られた拳からは血が滴る
そして、何かを呟いた後
諦めたように
でも悲しそうに笑っていた
そんなお兄ちゃんは今すぐ消えちゃいそうだった
私は何かに急かされるように
急いでお兄ちゃんの所へ行って声をかける
「お兄ちゃん」
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作者名:雪姫華-yukika- | 作成日時:2024年3月17日 19時