弐佰拾参) 本心 ページ27
A「あそこなら日陰だし、人も来なさそう」
休憩をするのに丁度良さそうな日陰を探していた私は
いつの間にか敷地の端っこまで来ていた
塀と屯所の間は日陰になっている
通り抜ける涼しい風は、
日に照りつけられて熱くなった身体を冷やしてくれた
それに、
ここにある石畳はもっと冷たくて気持ちいんだろうな
寝っ転がって一気に身体を冷やしたいところだけど...
流石にやめておく
A「...あれ??」
視線の先に見覚えのある人がいる
・
・
・
A「平助!!」
あと数歩という距離まで来て声をかけた
藤堂「あ、あぁAか」
平助は何か考え込んでいたらしく、
私が声をかけるまで気が付かなかった
A「どうかしたの??」
いつものような元気がない
少し難しそうな顔をしている
A「...もしかして、本当に具合悪い??」
平助は慌てて手を振った
藤堂「え!? いや、そういう事じゃなくて...」
藤堂「って、"本当に"ってことは俺が体調悪いわけじゃないってバレてるのか」
A「まぁね」
A「...その悩み、この礼龍寺様が聞いてやろうじゃないか」
そう言って
「えっへん」
と言わんばかりに胸を叩いた
藤堂「ははっ、なんだよそれ〜」
A「あ、あとこれおにぎり」
A「手伝ってもらって隊士みんなの分作ったの」
そう言ってから竹皮で包んだおにぎりを差し出す
藤堂「ええまじ!?!? ありがとな!!」
A「はい、どうぞ」
A「それで、どうしたの??」
私の言葉に
平助の表情は晴れから曇りへ変わる
藤堂「...俺さ、将軍の警護に...行きなくなかったんだ」
平助は地面を見つめたまま、ポツリといった
A「どうして??」
藤堂「...元々、新選組は京の治安維持が目的だった」
藤堂「なのにいつの間にか、幕府の家来みたいになっちまってさぁ」
藤堂「なんだかやる気が出なくて」
A「なるほどね」
藤堂「...何がしたかったんだろうって、色々考えちまってさ」
A「時が移ろうように、ものの在り方も変わっていく」
A「それには誰も抗えない」
A「だけど、人の心はそう簡単に変わらないものだよ」
藤堂「...俺、このままでいいのかな」
A「平助はどうしたいの??」
藤堂「俺は...」
そう言って平助は顔を上げる
緑色の瞳は、青く晴れ渡る空を映していた
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作者名:雪姫華-yukika- | 作成日時:2024年3月17日 19時