弐佰肆) 稽古・壱 ページ14
あれから少し経ち、
五月にも関わらず蝉が鳴き始めた頃
A「はぁ...今日も暑いなぁ」
非番の私は縁側に座っていた
あれから結局、
総司に聞けないまま時間が過ぎている
総司は隠したいんだろうし
無闇には聞けない
それに
新選組のため...近藤さんのために刀を振るう総司にとって
それが出来なくなることは一番辛いはず
A「はぁ、待つしかないのかなぁ」
でも待ってずっと言われなかったら??
そう考えると自分はどうするのが正解なのか分からなくなる
「何を待つの??」
不意に声をかけられて思わず身構える
声のする方に視線を向けた
そこにはニコリと笑って首を傾げる総司がいる
A「なんだ、総司か....びっくりさせないでよ」
いま聞かれてまずいこと言ってないよね!?
内心とんでもなく焦る
沖田「べつにびっくりさせるつもりなんて無かったけど」
A「それより、どうしたの??」
沖田「折角の非番だし、稽古でもしようかなって」
沖田「Aちゃんも副組長になったし、もちろん参加するよね??」
総司は相変わらずにっこりと笑っているが、
その表情からは
「君に拒否権はないよ」
と伝わってくる
A「いいよ、どうせ暇だったし」
どうやら独り言は
総司に聞かれてたことだけだったらしい...
そっと一人胸を撫で下ろす
沖田「行くよ」
そう言って私が立ち上がるのを待たずにスタスタと歩き出す
A「ちょっと待ってよ」
私も慌てて追いかけた
・
・
・
沖田「それより、最近鍛錬はやらなくなったの??」
少し歩き始めた頃、総司が思い出したように言う
A「うん、なんか最近疲れやすくて」
哀燐が襲撃してきた日から、何故か身体の疲れが取れない
力を使う時は問題ないけど...
使ったあとはその反動で酷く疲れが出てしまう
A「ははっ」
沖田「ふーん」
沖田「Aちゃん、ちゃんと寝れてる??」
A「普通に寝てるけど...なんで??」
沖田「くまが酷いよ」
A「嘘っ」
慌てて目の下をさする
あでも...
いつもみたいに冗談かな
なんて考えながら総司へ視線を向ける
沖田「嘘じゃないよ」
総司は私の心を見透かしたように言った
A「そこは嘘って言ってよ」
あーあ、
明日からはちゃんと隠さないと
最近は化粧しなくて楽だったのにな
A「はぁ...」
晴れ渡る空とは逆に
私の心はどんよりとしたまま
稽古場へと向かった
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作者名:雪姫華-yukika- | 作成日時:2024年3月17日 19時