弐佰壱) 風邪 ページ11
〜沖田side〜
屯所に大勢の足音が近づいてくる
｢終わったのかな｣
皆が警備の任が終わって帰ってきた
騒がしくないから誰も怪我とかしなかったみたい
ていうことは、もちろん君も無事に帰ってきてるんだよね??
いつも傷だらけで倒れてるから
それに、僕は 最近休みばっかり取らされてるから
君を守ってあげられないし...
｢危なっかしいんだよね君は｣
強いのは十分承知してるけど、
目の前のことに突っ込んでいく平助みたいな感じだし
それに、
なんか今にも消えちゃいそうに思える時もある
そんなことを考えていると再び咳が出る
｢ゲホッゲホッ!!｣
｢はぁ...｣
口元を抑えていた手に なにかの感覚がある
ゆっくりと手を離して視線を向ける
｢っ...!!｣
部屋が暗くてよく見えないけど
手の感覚で分かった
"血"だ
｢ただの風邪じゃ、血なんて吐かないよね....｣
そして近くにあった手ぬぐいで血をふき取る
ﾄﾝﾄﾝﾄﾝ
廊下で足音が聞こえる
それはこちらに近づいてきて、僕の部屋の前で止まった
血の付いた手ぬぐいを急いで布団の下に隠す
A｢総司、起きてる??｣
Aちゃんだ
今すぐに戸を開けたい気持ちを抑えて答える
｢Aちゃん??｣
そう言ってから、布団を出て戸を開けた
｢おかえり｣
僕がそう言うと
A｢...ただいま｣
君は淡く微笑んで言う
だけどその瞳にはいつものような輝きはなかった
酷く疲労を滲ませる君は、池田屋の時を思い出させる
｢随分汚れてるみたいだけど、何かあったの??｣
疲れた表情の次に 土で汚れた羽織が目に入る
夜の羽織は白いから余計に目立っていた
A｢うん、ちょっとね｣
A｢でも怪我はしてないよ｣
｢血もついてないし、本当みたいだね｣
怪我はしてなくても何かあったのは事実だ
普通、ここまで土が付くことなんてない
本当は色々聞きたいところだけど、今日はやめておこう
A｢帰ってきたって報告しようと思ってただけだから｣
A｢そろそろ行くね｣
そう言って振り返る
今まで背に月光を受けていたから分からなかったけど、
振り返った時 月に照らされた君の顔は
白を通り越して青白かった
ﾊﾟｼｯ
思わず手を掴む
｢顔色悪いよ｣
A｢.......月のせいだよ｣
そう言って僕の手を振り払う
これ以上は何も言うなというような顔で見た後
君は部屋に向かった
〜沖田side end〜
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作者名：雪姫華-yukika- | 作成日時：2024年3月17日 19時
