漆拾伍) 大丈夫 ページ9
土方「確かに綱道さんは薬の開発責任者だったが、完成前に居なくなっちまった」
雪村「...!!」
土方「薬を飲んだ奴らは前川邸にいる」
土方「血に触れない限りは大人しいが、一度壊れると手が付けられない」
千鶴はその時初めて羅刹を見た時のことを思い出した
剣を振りかざし、誰彼構わずに切りつけて血を求める様子は
"壊れた人間"というほかなかった
土方「これが俺達幹部しか知らねぇ新選組の秘密だ」
土方「それをお前は知っちまった」
土方の言葉を聞きハッとなる
"新選組の秘密を知っちまった"
それは部外者である者が秘密を知ったと捉えられる言葉だった
土方「お前は綱道さん探しには役立つかもしれねぇが、お前が居なくても困りはしない」
土方「不穏な動きがあれば即座に殺される」
土方「そうてめぇの肝に銘じておけ」
雪村「私を殺さないんですか??」
土方「まだ殺さねぇよ、もっともいつ死のうと困らねぇがな」
土方は徐に立ち上がり戸を開けて廊下へと出る
千鶴も土方に続き廊下に出た
土方「薬の管理を任されてた山南さんは改良を続けて理性を保ったまま腕を完治させようとした結果が"あれ"だ」
土方「お前は腐っちまってる姿しか知らねぇだろうが、山南さんは元々才もあり腕も立つ人だ」
土方「新選組ができる前から俺の兄貴みたいなもんだった」
月を見上げながらそう言った土方の声は
悲しさが隠せていなかった
しかし、髪が夜風に撫でられはっきりと見えた横顔は
真っ直ぐと前を捉えていた
土方「俺達には山南さんが必要なんだ」
土方「あの人を失う訳には行かねぇんだよ」
千鶴は土方の話を黙って聞いていた
彼女の表情には悲しみが浮かび、瞳が揺れていた
雪村「大丈夫です」
土方は振り返り千鶴を見た
雪村「山南さんは、きっと大丈夫です!!」
強く言った千鶴に対し土方は微笑んだ
土方「あぁ、あの人の精神が薬に勝つように今は賭けるしかねぇな」
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A「全く...土方さんも素直じゃないんだから」
Aは千鶴が心配で少し前から様子を伺っていた
A(土方さんは、ああは言っても絶対殺さないからね)
A(素直に仲間だって千鶴にも伝えればいいのに...)
A「まぁ、土方さんの言葉の裏を千鶴も分かってるみたいだけどね」
満足気に呟いたA
そして、二人に気づかれないように自分の部屋へ戻って行った
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作者名:雪姫華-yukika- | 作成日時:2024年2月21日 13時