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漆拾壱) 叫び ページ5

山南「自分で思うより私は賭けに弱かったようで....」



A「大丈夫ですか??」



そう言いながら、Aは山南の傍に立った

月明かりにぼんやりと照らされる部屋には
白髪になった山南と
首元を紅く染め上げたAが居る

着物の首元が白いということもあり、
血で染まった部分は部屋が薄暗くても目立っていた



山南「礼龍寺くん、君は私の心配をしている暇はないでしょう」

山南「今のうちに私を殺しなさい」



A「駄目ですよ、山南さん」

A「....殺せないよ」ボソッ



山南「薬は失敗し、既に私の意識は無くなりかけています...!!」



更に苦しむように言う山南



山南「このままでは...君を...殺してしまう...」



A「大丈夫ですよ」

A「私そんなにヤワじゃないですよ」



山南「殺りなさい!!!!!!」



そう言うと山南は一歩、また一歩とAへ距離を縮める



A「山南さん..??」

A(視界はまだぼやけてるけど、今ならっ...!!)



A「あれ...??」



手刀で山南を気絶させようとした時、
Aは山南の毛先が黒くなり始めていることに気が付いた



A(人に戻り始めてる..??)



そう考えているうちに山南の手はAの頭部へと伸びる



A「あっ...!!!」



Aが声を上げた時には、頭に挿していた簪を抜かれていた

山南は簪で自分の心臓を突こうとしている



A「駄目だよ!!」



必死に止めるAだが羅刹となった山南の力は強く、
心臓の方へと持っていかれてしまう



山南「さぁ、殺してください」



A(もう、目が正気じゃない)

A「嫌だよ...」



Aの目に涙が滲む

山南は厳しく無駄口を叩かないような物静かな人物であったが
その中に存在する"相手を想う気持ち"はとても強かった

Aが屯所へ来てから、関わることは多くはなかったが
度々部屋に来て顔を覗かせたり、時には叱ったりと
何かとAを気にかけてくれていた

その山南を"殺す"なんてことはAには到底できなかった



A「殿丸!!!!!!!!」

A「まだなの!?!?」



Aが悲痛な叫びを上げる



ガラガラッ

ドタッドタッ



殿丸「こっち!!」



Aの叫びと同時に玄関の戸が開けられ、
廊下に数人の慌ただしい足音が響く



土方「こりゃ一体...」



廊下に横たわっている千鶴

羅刹になった山南

肩から血を流すA



到着した幹部達はその光景に目を見開いた

漆拾弐) 事実→←漆拾) 伝達



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作者名:雪姫華-yukika- | 作成日時:2024年2月21日 13時

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