玖拾陸) 夢・参 ページ34
私の問いかけにお母様は申し訳なさそうに口を開く
翡翠「ごめんなさい、このことは私の口からは言えないわ」
翡翠「あの子のことですから...」
翡翠「ただ、黒蓮のことを悪だと決めつけないであげて」
翡翠「私から言えるのはただそれだけです」
そういうとお母様を包む光は弱くなり始めた
翡翠「もう時間が無いようですね」
A「お母様っ...!!」
翡翠「夢の中ですが貴方の顔を見ることが出来て嬉しかった」
翡翠「A、最後に一つだけ....」
翡翠「もし私が貴方に辛い判断をさせなければならない時、Aが辛い方を選択してください」
A「私が辛い方を??」
翡翠「はい..."常世と現世を救う"ためには貴方にしてもらわなければなりません」
翡翠「...貴方しかできないことなのです」
A「常世と現世を救う...??」
A「待ってお母様、意味がよく分からないわ」
翡翠「ごめんなさいA、時間が来てしまったようです」
A「待って!! まだ聞きたいことが...!!」
翡翠「...私のお願い聞いてくれますか??」
淡く光りながら私を見つめる瞳には涙が浮かんでいた
その様子に私は頷くしかできなかった
A「....はい」
まだ聞きたいことが沢山ある
だけど、お母様も沢山伝えたい事がある中で
今のことを選んだ
それはきっと早急に伝えなければいけないことだったはず
今はただお母様の意を汲むことが最善だよね...
翡翠「ありがとう」
翡翠「A、愛しています」
私を抱きしめると同時にお母様は消える
A「お母様...」
そして夢の中、私の意識も遠のいた
・
・
・
・
パチッ
私はゆっくりと目を開けた
見慣れた空間に、吸い慣れた空気、聞き慣れた音
それは
私が夢の世界から現実の世界に戻ってきたことを感じさせた
A「よいしょっと...」
重たい身体をゆっくりと起こす
暗闇の中から現実の世界に戻ってくることができた安心感に
お母様に聞きたいことが山ほどあるが
それを聞くことが出来ずに もやりとする感情や
私は死ぬ運命であるということを知った空虚感
それらの様々な感情が入り乱れている
A「はぁ...」
A「...私は、死ぬ」
ポツリと口にする
それを口に出したことで"死"という存在が
現実味を帯びた気がした
ガチャンッ
部屋の外で何かが割れる音がした
立ち上がって部屋の戸を開ける
そこには顔面を蒼白させた千鶴が立っていた
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作者名:雪姫華-yukika- | 作成日時:2024年2月21日 13時