月龍鬼の少女は月に願う〈第一章ノ参〉〜薄桜鬼〜 (ページ33)

今日:27 hit、昨日:53 hit、合計:3,095 hit

玖拾陸) 夢・弐ページ33

A『お母様、私死んじゃうの??』

幼い私は目に涙をためて尋ねた

翡翠｢それは...｣

お母様は言葉に詰まった様子だった

それは私の質問に対して頷いたも同然だ

翡翠｢...死なないわ｣

お母様は再び哀しそうに微笑んだ

A『良かった...』

A『わたし、お母様とずっとずっと一緒にいるもん!!』

私はお母様に抱きついた

翡翠｢Aっ...｣

翡翠｢そうですね、私もAとずっと一緒にいますよ｣

お母様は嘘をつくのが下手だ

そんな涙を堪えた顔で笑ったって...

でも小さい頃の私はそれに気がつけなかった
いや、気が付きたくなかったのかもしれない

"自分が死ぬ運命"であるということに

A｢私の運命は....死｣

どうしてこんな大切な記憶を忘れてたんだろう

今思えばところどころ記憶が無い

お母様が死んだところを見ていないのに
なぜ"死んだ"と信じていたのか

そして、お母様と幼い私の会話も他人事のように覚えていない

もはやここまでくると、"私は誰なのだろう"とさえ思えてくる

ﾌﾜﾘ

幼い私を包む光がだんだんと薄くなる

そして見えなくなった

A｢...｣

お母様はただ遠くを見たまま立っていた

ﾁﾗｯ

しかしふと視線が私とぶつかる

A｢お母様...??｣

翡翠｢A｣

A｢私が見えているの....??｣

翡翠｢はい｣

そしてお母様は両手を広げる

それは"おいで"の合図だ

A｢お母様っ...!!｣

A｢会いたかった!!｣

とめどなく溢れ出る涙など気にせずお母様の胸に顔を埋めた

翡翠｢あらあら、Aはまだ小さな子供のようですね｣ﾌﾌｯ

A｢お母様、私はお母様が死んでしまったと思ってたの｣

翡翠｢そうですね、色々とありましたから...｣

翡翠｢A、私が差し上げた首飾りは持っていますか??｣

A｢うん!!いつも肩身離さずにもってるよ｣

そう言って首飾りを着物の襟元から出して見せる

翡翠｢そう、安心しました｣ﾆｺｯ

翡翠｢それはとても大切なものですから...｣

A｢黒蓮に力を奪われた時に守ってくれたの｣

A｢これは一体...｣

翡翠｢黒蓮が...あの子も辛い立場なのですよ｣

翡翠｢貴方から力を奪ったことは許されることでは無いですが、あの子のことを考えるとあの子自身もとても辛かったでしょうね｣

A｢黒蓮自身も辛かった...??｣

A｢黒蓮の様子がおかしいのもそのせい??｣