玖拾陸) 夢・壱 ページ32
その日夢を見た
それは長いようで一瞬の夢だった
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いつの間にか
何も無いただ暗い闇が広がるだけの空間にいた
A「ここは...」
辺りを見渡すが何も見えない
自分がどこから来たのか、どこから出ればいいのか分からない
だけどとてつもない寂しさが襲ってくる
誰かいないのかと必死に目を凝らして再度見回した
A「あれは...」
少し先に光が見える
それは闇の中にぼんやりと輝いていた
その光に向かって走る
そこに何があるのかは分からない
しかし、そこに行けば何かが分かる気がした
私が気づかずに、疑問にすら思っていないようなことを
何かが教えてくれる気がした
それに、私の感じるこの寂しさを埋めてくれるのではないかと
A「はぁ...はぁ...」
光の元に着く頃にはすっかり息が上がっていた
A「えっ...??」
近くに来てようやく分かった
何が光っているのか
光は"私の姿"をしている
今の私ではなく"昔の私"
A『うぅっ...』
小さな身体をさらに小さく丸めて泣く少女は
小さい頃の私だった
A「なんで私が」
A『お母様っ』
その言葉を聞いて体が硬直する
白鈴から聞いた話を思い出した
「お母さんは暗黒の間にいる」
あぁそうだ、
お母様は今暗黒の間にいるんだ
何も見えないただ広く暗いところに一人で
辛く苦しい思いをしながら...
翡翠「あらあら、Aどうしたのですか??」
一つだった光が二つになりお母様になる
A「...!!」
視界がぼやける
涙が溢れた
二度と会えないと思っていたお母様が今目の前にいる
A『どうしてか、とても怖くなったの』
A『私の身体の中に何かが渦を巻いているみたい』
翡翠「っ!!....そうなのね」
翡翠「こちらにいらっしゃい」
お母様は小さな私を胸に抱き寄せて言った
そして悲しそうな表情で口を開く
翡翠「A」
A『なぁに?? お母様』
翡翠「貴方にも、辛い運命を背負わせてしまったようです」
A『つらい...うんめい??』
翡翠「私は運命は必然と考えています」
翡翠「良く考えればわかる事だったのに...」
抱きしめていた腕を緩めて離れると
両手で私の頬を包み込む
翡翠「もし、私に"奇跡"が起こり願いが一つ叶うのなら」
翡翠「....貴方には生きていて欲しいわ」
お母様は哀しく切なげに微笑むと
再び私を抱きしめていた
私はそれをただ見ていることしか出来なかった
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作者名:雪姫華-yukika- | 作成日時:2024年2月21日 13時